32話「地獄のミサンガ作り、開幕2」
「よし、できた」
完成したミサンガを持って出来を見る。
冬をイメージして、ビーズ色は白。
刺繍糸は青、グレー、白で構成してみた。
結構上手くできた気がする。
色合いもいい感じだ。
あれからまずは孤児院のみんなで、練習がてらお揃いのミサンガを作ろう!
ということになった。
ミサンガは、みんなとお揃いとわかるようにビーズを真ん中に入れて、三つ編みをするだけのシンプルなものにしてみた。
おじいちゃんはビーズをミサンガに使うだなんて予想してなかっただろう。
一泡吹かせに、今度見せに行こうと思う。
(さて、様子見に行こうかな)
ヒルダ達を追いかけ回して疲れた私は、不器用組を器用組に任せた。
すぐに理解してくれたので、苦手な子と組んで教える方針をとった。
おかげで体力がちょっと回復した。
子供と遊ぶのは体力がいる。
大人にはなかなかキツいものがあった。
(まぁ、体は子供なんだけど)
とはいえ、いつまでも任せている訳にはいかない。
教える側が間違えている可能性もある。
まぁ大丈夫だと思うけど、一応見ておこう。
どこから回ろうかと見渡すと、ちょうど終わっている組を見つけたので近寄る。
「ディランもうできたの?」
ディランの前にはすでに完成されたミサンガが置かれている。
綺麗に編み込まれた三つ編み、ずれることなくちょうど真ん中の位置に置かれたビーズ。
完璧な出来だ。
「おかげさまで。誰かさんの髪を散々結ばされたからな」
私の方を見ながら、大きくため息を吐く。
そういえば、小さい頃に三つ編みにハマっていた時期がある。
その時に、ディランとユアンに括り直させたことがある。
自分のちっちゃい手じゃ出来なかったから。
「うわあああ!!もうわっかんねー!!!」
少し離れた所から、ザレックの叫び声が聞こえてくる。
嫌な予感しかしない。
行きたくなくて、知らないふりをしていると「おい、早くいけよ」と声がかかった。
他人事のようにニヤニヤとしているディランにムッとする。
そうだ。いいこと考えた。
「ふーん、いいの?そんなこと言って?」
代わりに行かせればいいんだ。
そう思って、ディランを真似してニヤケ面を向けると、ディランは顔を青ざめさせた。
何回もやり返されてるのに学ばないみたいだ。
まぁ、ディランもまだガキンチョだから仕方がない。
「今からディランをザレック担当にしてもいいんだよ?私は」
「おい、ジョン。そこ違うぞ」
視線を逸らして、まだ終わっていないジョンに真面目に教え出した。
(やれやれ、私が大人になってあげよう……)
その場から離れてザレックの元へ向かう。
「ザレック、何発狂してんの?」
「パメラぁぁぁぁぁぁ!!!」
声をかけると、椅子から飛び降りて足元に泣きついてくるザレックを受け止める。
さっきのやる気はどこかにいったみたいだ。
ていうか何があったのか分からない。
だいたい予想はつくけど。
「ユアン、ザレックどうしちゃったの?」
泣きついてばかりで話にならないから、ユアンに説明を求める。
「少し目を離した隙に兄さんのミサンガが絡まっちゃって……」
そういってユアンは、ザレックのミサンガを手に持った。
ミサンガのはずなのに、四角形。
いや、これは……
「……蜘蛛の巣????」
「うん。ちょっと違うものが出来たみたいなんだ。それで落ち込んじゃって……」
どうやったら目を離した一瞬でこんなことになるんだろう。
見事に絡まりまくった糸に首を傾げる。
「才能ないんだよ、俺!どしたらいい?どうするべきだ!?パメラァ!!」
「ザレック、落ち着いてよ。
とりあえず先にみんなの様子見てくるから。
それが終わったら私と一緒に編もう。
それなら、失敗しないでしょ……多分」
「パメラ!!!!」
満面の笑みを浮かべて、ガバッと上から抱きしめられる。
失敗しないよね?しないはずだよ。
なんか私まで不安になってきた。
「ユアン。それまでこの抱きつき魔を任せたよ」
「うん。兄さん、とりあえず俺の作ってるところを見て予習しとこうよ」
「おう!ユアンもありがとな!!!」
なんとかやる気を復活させられた。
でも重労働が待っていると思うと、嫌になってきた。
それにしてもユアンは面倒見が良くて尊敬する。
わざわざあのザレックと組むなんて………ユアンって実は……いや、やめとこう。
私が今度は泣きつく羽目になる。
◇◇◇
残る一人を除いて、他の子たちのミサンガも見て回った。
苦手な子も形が歪なだけで、大体できているみたいだ。
慣れたらもっと上手く作れると思う。
そして、やっぱり心配していたザレックが一番悲惨だった。
残る一人は、アンちゃんだけだ。
さっきからアンちゃんは誰とも組まずに、肘をついてぼーっとしている。
ミサンガに全然手を出してないみたいだ。
「アンちゃん、一人でなにしてんのー?」
声をかけると、こちらに視線をちらっと向けて、また前を向いた。
「作んないの?」
「……私は別に孤児院でお揃いを作るほど、ここに馴染んでないわ」
落ち着かないのか手遊びしている。
馴染んでないかぁ……結構馴染んできてると思うけど。
「これは……つけるべきじゃ……。
必要ないわ。その分バザールに当てるべきよ」
なるほど。
アンちゃんなりに気にしていたみたいだ。
「やだなーアンちゃん。
今はそう思ってるかもしれないけど未来は分からないでしょ?
だから使わなくてもいいから作っておこうよ」
「いやよ。あたしは欲しいなんていわないもの」
「もー!!!屁理屈言わない!!!そんなこというならこうだからね!!!」
アンちゃんの左手を取って、私が作ったミサンガを結ぶ。
「ちょっと!!」
呆気に取られたアンちゃんが気づいたときには、もう結ばれたあとだった。
「何すんのよ!」
立ち上がったアンちゃんの左手には、赤髪と真反対の色合いのミサンガが揺れている。
うん、いい感じだ。似合ってる。
「アンちゃん、これなら色も気にならない?」
アンちゃんの目が見開かれる。
「あんた……気づいてたの?」
「もちろん。自分の視界に入らないように気をつけて生活してたら、誰でも気づくよ」
「……」
アンちゃんがここに来て数日、髪の毛が視界に入ると、唇を噛み締めているのに気が付いた。
だから院長にお願いして、リボンを用意してもらった。
それ以来、ずっと髪の毛を結んでいる。
「そのミサンガ……もう外せないね。
あ、切るとかもったいないことしないでよ?」
「しないわよ……」
じっくりと自分の手首に着いたミサンガを眺めている。
「あんた意外と器用なのね」
「でしょ?
せっかく私が作ったんだから、それは聖灯祭のプレゼントってことで大事にしてね。
お願いが思いつかないなら、後日私が叶えてあげてもいいよ?」
ドヤ顔をしている私に呆れたような顔をしているけど、よく考えてほしい。
私に願いを一個叶えてもらえるなんて、なんて幸運なんだろう!
もっと喜んでもいいのに。
「あんたも結構お人好しよね」
「そうだよ。だから覚悟しといたほうが良いよ」
「はぁ?」
「ここにいるみんなもお人好しだから。
なんせ、みんな院長の子供だからね」




