30話「亀さんアンちゃん、街へ行く4」
「よし!行くぞおお!!!」
「おー!!!」
「……」
あれからザレックと二人で、アンちゃんを連れて騎士団を出た。
ユアンは、ディランが模擬戦に誘っていたので置いてきた。
ザレックも誘われていたが護衛係として一応連れて来たからいる。
アンちゃんは私たち二人で不安だろうけど、多分あの二人はいない方がいいだろう。
顔がいいから注目を集める。
多分アンちゃんは余計に疲れるだけだと思う。
私は楽しいけど。
この街のど真ん中の位置にある広場についたので、端の方に立ち止まろうと移動をする。
「市場の行く前に、中央付近にある建物を案内しとくね」
着いてきているか確認をするために振り返ると、前を見ずに走っている冒険者が、アンちゃんにぶつかりそうになっているのが視界に入った。
「危ない!!」
声を張り上げる。
腕を引こうと思ったが、
アンちゃんの後ろにいたザレックが手を伸ばしているのが見えて、手を引っ込めた。
「きゃっ!!」
ザレックが腕を引いたおかげで、間一髪ぶつからなくてすんだみたいだ。
冒険者は急いでいるのか、
「悪いっすね〜!!」と遠ざかって行った。
金髪で褐色の、いかにもチャラそうな男だった。
よし、覚えた。
今度同じことしてたら、文句言ってやる。
「アンちゃん。ここ一通り多いし、たまにああいうバカがいるから気をつけて。
怪我がなくて良かったよ」
「え、ええ。……ザレック助かったわ」
戸惑った様子のアンちゃんがザレックにお礼を言った。
こんな時でも感謝を忘れないとは、アンちゃんはいい子だ。
頭を撫でようとすると真っ赤な顔で避けられた。
そういう所も可愛い。
「それにしてもザレックナイス~!!かっこ良かったよー!!」
「だろ!?わはははっ!」
もちろん助けたザレックもいい子だ。
私が褒めると誇らしそうに笑っている。
「さて、気を取り直して説明するね。
私たちが歩いて来た場所が、西。
今、左に騎士団が見えてる方向ね」
「ええ」
「それで、南には冒険者ギルド、東には商業ギルド、そして北には領主様の屋敷があるよ」
指で差して、アンちゃんに目立つ建物を紹介する。
どれも大きくて目立つ。
この中央広場にいれば、見えるようになっている。
「これさえ覚えときゃアンでも迷わねえぞ!!」
「どうしてよ?」
「一直線になってんだよ門まで!!」
ザレックの説明も簡潔でいいけど、補足が必要だろう。
「ここって大通りになってるでしょ?
これは魔物の襲撃が来たらすぐに駆けつけるように、避難できるようにって一直線になってるんだよ。
だから外にいる時に魔物が襲撃してきたら、この大通りを通ってさっき言った4つの建物の中に入って避難してね」
領主の館も商業ギルドも避難することができる。
これも珍しいと思う。
他の領地ならそんな気軽に敷地に入れない。
(改めてみるといい街だなぁ)
この街で産まれて良かったと思う。
「あ、そうだ。
迷った時も、院長が有名だから孤児院の場所を教えてもらえるよ。
だから、困ったら大通りっていうことだけ覚えておいて」
アンちゃんに注意事項+迷子の対策を伝えると理解したのか頷いた。
これで大体説明が終わったはずだ。
ぐるーっと回って説明が不足していないか確認する。
あ、違う。まだあった。
「アンちゃん、北側。
領主様の屋敷より北は、街で行われる催しがある日には行かないで」
「なんでよ?」
「当日、あっちは露店とか置かないから警備が薄くなるんだよ。
路地裏なんかは特に危ないから気をつけてね」
「ええ、気をつけるわ」
よし、これで今度こそ最低限の説明は終わったはずだ。
「じゃあ、説明も終わったし市場に行こう!!
買い物は今から行く市場をおすすめするよ!
大抵は市場に行けばあるから。こだわりがないならだけどね」
「おう!!美味しい店もいっぱいあるぞ!!」
「ふーん」
アンちゃん興味は持てないのか、つまらなそうに頷いた。
疲れたからっていうだけじゃなく、心なしかボーッとしている気がする。
(うーん、外に行ってもダメみたい……)
騎士団にいる時は多少打ち解けたと思ったけど、まだダメみたいだ。
(ま、こういうのは焦りは禁物だよね)
「さて、じゃあ市場に出発!!!
おつかいの帰りに美味しいもの食べに行こう!!」
「金あんのか?ないなら奢るぞ?」
「ふっふっふっ、あるよ!!院長からお小遣い貰ってきたからね!」
当たり前に財布を渡して来ようとするザレックを止めて、ポケットから銅貨を二枚だす。
高級な食べ物は食べれないけど、十分に満喫できる金額だ。
「俺、肉!!!!!」
「いいねー!アンちゃんは、何食べたい?」
暗い表情に戻ったアンちゃんの顔を覗き込む。
「命の恩人なんだから遠慮はなしだよ」
「恩人って……知り合いだったでしょう。それに……おでこも……」
私のおでこを見て、俯いたアンちゃんの顔を両手で包んであげる。
「それでもだよ。あんなに必死になって庇ってくれたのが嬉しかったんだよ」
にこりと笑いかける。
自分も危ないかもしれないのに勇気のある行動だ。
十分褒められるべきだと伝わって欲しい。
「ほら、なんでもいいよ?予算のうちなら」
「……甘いもの」
小さい声で要望を出したアンちゃんに、ザレックと二人で顔を見合わせて笑う。
「なによ」
「いや、なんでもない!じゃあ甘いもの食べに行こう!!」
「そうだな!行くぞアン!!!」




