27話「亀さんアンちゃん、街へ行く」
「あ!いたいた!」
三階の窓から景色を眺めているアンちゃんを見つけて駆け寄る。
「……なによ」
近寄るとアンちゃんは不審な声を漏らした。
あれからすっかり警戒されてしまったみたいだ。
「院長が、私たちと一緒に市場までおつかいに行ってきてだってさ。
ついでに街案内も任されたから行こう」
アンちゃんは一週間経っても誰とも関わらずに、部屋に引きこもっている。
まるで警戒した時の亀みたいだ。
その様子を見て、街案内してみてはどうかと院長に相談したら、ゴーサインが出た。
とりあえず街案内でもして、気分を紛らわせる作戦だ。
「あたしが行かなきゃダメなの?」
「働かざるものなんとやらって言うでしょ?
それに住む街を知っておいたほうが、迷子になった時に便利だよ」
「外に出ないのになんで迷子になるのよ」
バカなの?と大きなため息を吐かれる。
「ばかでもなんでもいいからさっさと行くよー。
行くところいっぱいあるんだから」
街は広いから、時間がない。
寄りたい場所もあるし、主要な場所しか案内できないだろう。
「ちょっと!!」
そう思って、アンちゃんの手を握って、孤児院の門まで急いだ。
待ち合わせ場所の孤児院の門に着くと、ユアンとザレックが話をしながらのんびりと立っている。
走ってくる私たちを見ると二人は笑顔を見せた。
アンちゃんに会えて嬉しい!みたいな表情を見せるのは高ポイントだ。
2人ともよくやった。
アンちゃんに見えないようにグッとサインをする。
「お待たせ!」
「アンやっと出て来たか!!今日は楽しもうな!!」
「ふふっ、そうだね兄さん。アン、無理はさせないようにするから安心してね」
「……」
アンちゃんは、胸の前で手を握り少し不安そうな表情を見せた。
初めての場所だから不安なのかもしれない。
(あ、違う。私とザレック見て不安がってる)
完全に問題児として認識されてしまったみたいだ。
(うーん。ま、否定できない!)
とりあえず連れ出したらこっちのもんだ。
どうにでもなるだろう。
「それじゃあ早速行こう!!」
「おおおおーーー!!!!!」
「はぁ……」
◇◇◇
大通りを歩いて、目的の場所の市場まで歩いているところだ。
寄りたい場所も主要な場所も、ちょうど通り道にある。
「アンちゃんはこの街のことどれくらい知ってる?」
最初の場所に着くまでに、この街の説明でもしようと思い尋ねる。
「名前と冒険者の街って言われているってことしか知らないわ」
ほとんど知らないみたいなので、一応説明しておいた方がいいだろう。
「ユアン、説明任せた!」
「ふふ……了解」
全部丸投げにする私にユアンは快く引き受けてくれた。
「この街はプロローグの街って呼ばれているんだ。
この街が冒険者に有名なのは、冒険者が初めて誕生した街って言われてるんだ。
東西南北に初級から上級の森、ダンジョンがあるからここが選ばれたって言われているよ」
ちなみに少し前にラナちゃんがカラスジュに呪われるはめになったイーストの森は初級の森だ。
「だから今でも、
この街にいれば移動もせずに、自分のレベルに合った場所を選んで挑戦できる。
そういう理由で冒険者が集まりやすいんだ」
この街はまさにゲームの最初の街、みたいな立ち位置だと思う。
街の名前的にもそうとしか思えない。
初め聞いた時は少しダサいと思ったけど、今は覚えやすい名前で、結構気に入っている。
他にも鍛冶屋、ポーション屋とかも色々揃って便利だから、この街は本当に冒険者が多い。
今も働き時の昼間だけど、冒険者をもう二十人以上は見ている。
でも、この街は何故か魔物の襲撃が多いから、冒険者がいること自体は助かっている。
その分、口の悪い人が多いイメージだけど、冒険者は一般人には基本手を出さないから貴族ほど鬱陶しくはない。
「お!!!もうそろそろ騎士団に着くぞ!!」
「兄さん。張り切ってるけど、訓練しにきたんじゃないよ?」
ちょうど説明し終わったところで、第一の目的地に着いたみたいだ。
騎士団は街の安全を守っている組織だ。
時に、冒険者と手を組み魔物退治などをすることもある。
騎士団は街の中央に配置されており、魔物の襲撃にいつでもどこでも駆けつけるようになっている。
その他にも、領主館や、冒険者ギルドなども比較的中央部分に配置されている。
まさに魔物に特化した街。
これも冒険者の街と言われる所以だ。
「せっかくだから騎士団寄って行こう。ディランいるかも」
この時間なら、騎士団に訓練してもらってるかもしれない。
そう思って提案する。
そもそも紹介したくて騎士団に寄りたかったから。
「そうだね、アンにも会わせたいし」
「ひっさしぶりだなー!あいつ元気にしてるのか?」
アンちゃんは首を傾げた。
「ディランって誰よ?」
また変な人が増えると思っているのか、顔を顰めている。
「んー、ユアンに引けを取らないイケメン!」
「はあ?」




