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25話「涼しげクールな美女登場」

 ユアンの部屋で朝を迎えて、身支度するために自分の部屋に向かった。


 支度をし終わって食堂に行くと、ドアの前でバッチリ身支度を終えたユアンとザレックが立っていた。


「はははっ!相変わらず寝起き悪いな!」

「……相変わらず朝から元気だよね。きっとコッコ鳥にも勝てるよ。戦ってきたら?」


 朝からうるさい目の前の男を、遠ざけたくてコッコ鳥の小屋の方向へ指を差す。


 コッコ鳥は、鶏が魔物化したものだ。

 でも危険性はないから、この孤児院でも家畜として飼われている。


「たしかに!!」


 私の言葉に真に受けて、本当に行こうとするザレックをユアンが止めた。


「ザレック兄さん、パムの冗談だよ。

 パメラ、兄さんはすぐに真に受けるんだからダメだよ」


 ユアンはただ止めているつもりだと思うけど、私は見逃さない。

 その言い方はすぐに真に受ける馬鹿って言ってるようなもんだ。


「あははは、ユアンがザレックはバカだってさ」

「えっ、俺はそんなつもりは……っ!」


 ユアンが私の揚げ足取りに焦って否定し始めた。

 でももう遅い。

 ザレックが疑う目をユアンに向けている。


 それに気づいたユアンの言葉が止まった。


「ユアン、お前昔っから誠実ですって顔してそういうところあるよな!!バカって内心では思ってたんだろおおおお!!」

「え、ちょ、兄さんおちついてっ……!」


 ザレックがユアンにつかみかかった。


 ザレックの言いたいこともわかる。

 ユアンって天然なのか、たまに変なところ……あるもんね。


 まぁそれが面白くて、完璧な聖人でも人間らしいところもあるんだって安心するけど。


 (ストレスって本当よくないんだよー)


 前世のブラック企業時代を思い出して、少し嫌な気分になる。


 (あーやめやめ。考えるだけ無駄)


「ほら、戯れてないで二人とも早く朝ご飯食べようよ。昨日の夜、食べてないからお腹空いた」


 自分のお腹を擦る。

 心なしか背中とお腹がくっつきそうなくらい凹んでる気がする。


(今日は朝から食べれそう……)


 食堂に入り、朝食を受け取るために配膳場所へ並びに行くと、2人とも喧嘩が終わったのか食堂に入ってきた。


 隣に並んだユアンが、ジト目で見てくる。


「パムひどいよ……」

「ごめんごめん、でもおかげで目覚めたよ。ありがとね」


 ニコニコとお礼を言うとユアンは「それならいいけど」と言って微笑んだ。


 自分でしといてなんだけど、ユアンは甘いと思う。

 もっと怒ってもいいんだけどね。ディランみたいに。


 もう一人の幼馴染を思い浮かべて苦笑いする。


 受け取り終わると、ヒルダに「こっちなの〜!!」と呼ばれて3人で向かう。


 ヒルダは私達も着いてきて嫌そうな顔をしていたが、ユアンが近くに来るとすぐに表情が笑顔になった。


 もちろんユアンはヒルダの横だ。

 私とザレックは反対側に並んで座る。


「ふふん、今日もユアンの隣はヒルダがもらったの!パメラ負けて悔しい?絶対悔しいの!」

「うんうん、悔しいなー」


 何回目かわからないこの勝負で、得意げに自慢しているヒルダに適当に返事をする。


(ヒルダも朝元気だよね……)


「チビはなんでこんな必死になってんだ ?パメラに負けたらなんかあんのか?」


 しばらく留守にしていたザレックが不思議そうに耳打ちしてきた。


「色々あったからまたあとで話すよ。

 とりあえず毎朝、ユアンを私に取られると思って頑張ってる最中なんだよ。健気だよね」

「健気?あのチビが?思い切り睨まれてるぞ……?」


 ザレックにそう言われてヒルダを見ると目が合った。

 確かに私を見て睨んでいる。


 ザレックと顔を見合わせると、ヒルダは怒りが頂点に達したのか、机をバンッと叩いて立ち上がった。


「ちょっと!ヒルダ聞いてないの!ユアンがいるのになんでそんなに近いの!!!」

「仲良いから?」


 ていうか、別にザレックじゃなくても耳打ちくらいするよ。

 それより朝からよく怒れるよね。羨ましい。


「前から思ってたの!!!なんでこんなのと仲良いの!!?」


 ヒルダはザレックに指を差した。


「はあ!?なんかってなんだよ!!俺の何が悪いって言うんだよ!!いい男だろうが!!」


 それを見てザレックがムッとして対抗するように立ち上がった。


(あーあー、始まった)


 この二人は似たもの同士なのか時々喧嘩が起こる。


(年の差もあるのになんでこうなるんだろ……)


「バカなところがヒルダはダメだと思うの!!」

「はぁ!?そういうお前はわがままだろ!!」

「女の子はちょっとわがままな方がいい!って八百屋のおばさんに言われたもん!!!」

「お前のはちょっとじゃねぇだろ!!」


 本格的に喧嘩が始まりそうになってきた。

 止めようと思ってユアンの方を見ると、目が合ってお互いに頷き合った。


 私はザレックの服の首元を持って引っ張り、ユアンはヒルダの腕を引いて座らせる。


 二人が無駄口を開く前に、私とユアンは口を開いた。


「ザレック、子どもに言い返すとせっかくのいい男が台無しになるよ」

「ヒルダ、人を蔑むのは良くないよ。ヒルダだって嫌なことを言われたら傷つくだろう?」


 二人とも自覚はあるのかウッと気まずそうな顔をして口を閉じた。


「わかったなら謝って」

「わかってくれたなら謝って」


 私たちにそう言われた二人はハッとした顔をして向き合った。


「ごめんなさい」

「ごめんな」


 すごく不服そうな顔をして二人は謝った。


「みんな朝からごめんなさい」


 院長が食堂に入ってきて、話し出すと騒々しかった食堂が一気に静まる。


 それも無理はない。

 今日は、例のあの子が紹介される日だ。


 昨日は孤児院に着いたばかりで、今日紹介すると言うことになっていたので、みんな浮き足だっている。


「みんなも、もう知っていると思うけど、今日は紹介したい人がいるの。

 アンゼリカ、入ってちょうだい」


 院長がドアの外に向かって名前を呼ぶと赤髪の女の子が入ってくる。

 さらさらなストレートのロングヘアーで背は高い。

 顔立ちは涼しげなお姉様タイプだ。


 美人の登場にワクワクしてきた。


 ヒルダの方を見ると、アワアワと顔を青くしている。

 ヒルダのライバルがまた増えたみたいだ。


(……面白くなってきた!!!!!!)


 昨日の今日で面白がるなと言われそうだけど、思うだけなら許して欲しい。


「さぁ、アンゼリカ。自己紹介お願いできるかしら」


 院長先生が赤髪の女の子の肩を持って前に軽く押した。


「アンゼリカ」


 アンゼリカは名前だけ告げて無言になり、食堂に沈黙が広がった。


(うん、声もいい)


「なにか趣味とか好きな食べ物とかあるかしら?」


 院長が、助け舟を出したが――。


「悪いけど、仲良くする気はないわ。

 だから私のことはいないと思って、今まで通り過ごしてちょうだい」


アンゼリカは私たちに無関心なのか、誰とも目を合わさないまま、空いている席に足を組んで座った。


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