24話「兄冒険者の帰還2」
「ザレック兄さん、助けて欲しいってどういうことだ?」
ユアンがそう聞くと、ザレックは頷いて口を開いた。
「パメラが気になってそうだから、まず依頼について話しておくな。
街は元に戻ったし、依頼は無事に完了した」
「そっか、良かった」
ザレックもユアンに劣らず相当な力持ちだし活躍したことだろう。
依頼料が良かったなら今度奢ってもらおう。
「とりあえずお疲れさま。それで?助けてほしい女の子は一体どこで知り合ったの?」
「孤児院だ。依頼を完了して、他所の孤児院を見たくなったんだ」
確かに気になる。ここって結構特殊な孤児院だから。
元聖女が経営してるし、院長に助けられた人たちからの支援だって多い。
だいぶ恵まれている孤児院だと思う。
「その女の子はアンゼリカって名前なんだ。
でも良くも悪くも普通ってか……あー!!!なんて言ったらいいかわかんねえ!」
ザレックは髪を掻きむしった。
「普通?どういう意味?」
「なんかずっと違和感っていうかモヤモヤしてんだけどわっかんねぇんだよ……」
頭を抱え込んだザレックに、ユアンと二人で首を傾げる。
(伝えにくい変化ってこと?)
「ザレック兄さん。兄さんが話しかけた時の相手の反応を思い浮かべたらおかしな所がわかるんじゃないか?」
「話しかければ返ってくるし……俺が馬鹿なこと言えば怒りもする。
あ!!そうだ!!!絶対泣かないんだよあいつ!」
「泣かない?兄さん、泣かないのはいいことなんじゃないのか?」
ユアンの言う通りだ。なにか違和感がある。
なんで泣かないことが問題なんだろう。
この事件と関係なく、以前から孤児院にいたなら――
いや、もしかして……この前提が間違えてる?だとしたら……
「よくねえ。この事件が起きて、盗賊団が空き巣目当てに街に入った。
あいつはその盗賊に襲われた被害者の子供だ」
「そんな……」
「……」
出来れば当たって欲しくなかった予想が的中してしまった。
きっと復旧で人手も足りなく、街の人たちも避難場所に集まっているはずだ。
そんな手薄な状態の街を盗賊団が目をつけたんだろう。
「泣かないなんて、昔の俺みたいだろ?
現実を受け入れられないし、どうしたらいいかわかんねえんだ。
俺がなんで生き残ったのかもわからなかった」
拳を握りしめるザレックを見て思い出した。
ザレックも初めてここに入ったときは、その女の子のように両親を盗賊団によって亡くした直後だった。
初めて会った時から今と変わらない姿で、いつも元気だった覚えがある。
でも、私から見れば、泣きもしないで人を笑わせようとしている姿は、どこか空元気を出しているようで痛々しかった。
だから、初めて泣いたあの日――
ザレックの掃除を手伝った日、あの時喜んだのを思い出した。
(なんで忘れてたんだろう……)
「だから俺は助けたいと思った。
俺は、この通り馬鹿だから何していいのかわっかんねぇ。
だからパメラ、ユアン。お前たちの力を借りてぇ」
少し間を置いて、ザレックは続けた。
「俺はこの孤児院に来て、お前たちに会って救われた。今度は俺もお前たちと一緒に救いてえんだ。
生きてていいんだってあいつに思って欲しい」
(あ、やばい……)
「だから頼む。俺と一緒にあいつを救ってくれ!!」
もうダメだ。そう思った時にはザレックに抱きついていた。
「頑張ったね……えらいよザレック……ぐすんっ、私、手伝うからね」
「兄さん…っ、俺も手伝うから一緒に頑張ろう」
「おう!ありがとうな。
……お、おい二人とも泣くなよお!!俺も我慢してんだぞ!!!ズビィィッ!」
きっと今の私の顔は涙で顔面が崩壊しているだろう。
でも無理だ。止められない。
だってあの時のザレックを知っているから。影でひとりで頑張っていたのを知っているから。
なのに今度は助ける側になりたいだなんて……。
あ、ダメだ。考えたらまた涙が……。
このあと散々泣き続けた私たちは、夕食も食べずに朝方まで作戦会議をした。
……つもりだったが、結局みんな途中で寝落ちしてしまった。
おかげで話がまとまらないままアンちゃんと初めての対面を迎えることになった。
「ザレック……鼻水と涙つけちゃったごめん……」
「別にいいぞ???」
「ふふっ、パムの顔が出来てる」
「うわあ!すげぇ!!!パメラ、これ保存できないか!?」
「汚いからやめて(やっぱ馬鹿だ)」




