18話「じゃじゃ馬娘との対決2」
「パメラ、私の部屋に来てほしいの!」
食堂で夕食を取っているとヒルダに話しかけられた。
眉が吊り上がって鼻息が荒い。
怒っているらしい。
「なんで?」
首を傾げてヒルダに聞くと、地団駄を踏み出した。
(……まだ怒ってんの?夜なのに元気だね)
怒りの原因は多分、今朝のことだ。
ユアンが私の髪の毛を払ったのが、イチャイチャしてるように見えたんだと思う。
どう見ても介護にしか見えないけど、ヒルダは独占欲も強いみたいだ。
「パメラはわかってるの!」
「わかんないから聞いてるんだよ」
たまには我慢を覚えて欲しい。
そう思ってすっとぼける。
決して焦らすのを楽しんでない。
これはヒルダのためだ。
「もー!絶対うそなの!!!」
「とりあえずご飯食べるまで待っててよ」
ヒルダを無視してマイペースに食事を続ける。
(それにしてもいい反応するよねー)
今も思い通りにならなくてヒルダはムッとしている。
表情がコロコロ変わって面白い。
にやけそうになる度に口を噛み締めて堪らえた。
「ごちそうさまでした」
手を合わせて、食器に清掃魔法をかける。
この日本式の挨拶はユアンが私の真似をしてから、孤児院でも流行っている。
ユアンの影響力は相変わらずすごい。
私の時は変な顔されたのに。
(おかしいよね……)
「パメラ!!!終わった!?話聞いて!ヒルダの話ちゃんと聞いて欲しいの!」
食器を片付け終わったら、ヒルダから腕を引っ張られる。
必死にちょろちょろ着いてきて、まるでアヒルの子供みたいだ。
(こういうとこが可愛いんだよねー)
ニコニコとヒルダを見ていたらまた怒られてしまった。
「はいはい。なんだっけ?」
「部屋に来て欲しいの!!!!」
「んーなんで?」
私が聞き返すと、ヒルダの視線が泳ぐ。
言葉を探しているみたいだ。
(わかりやすい……)
よからぬ事を考えているのがバレバレだ。
さすがは8歳児。
でも8歳児って本来こんなものだよね。
ユアンたちが年相応じゃないだけで。
「と、とにかく来て欲しいの!!!」
言い訳は諦めたらしい。
来て欲しいで乗り切ろうとしている。
「いいよ。行けばいいの?」
不安そうな顔をしているヒルダを見て、つい口走っていた。
(初めから乗るつもりだったし、まぁいいや。それにこの顔見るとね……)
嬉しそうな笑顔を浮かべるヒルダに、苦笑いを浮かべる。
「着いてきてほしいの!!」
グイグイ引っ張られるヒルダに着いていく。
そんなに急がなくても逃げるつもりない。
(生意気な妹ってこんな感じなのかな)
前世は一人っ子だったから新鮮な気持ちだ。
(あと手がかかるほど可愛いってこういうこと?)
嬉しそうにスキップをし始めたヒルダに、こっちまで楽しくなってきた。
「あ!!!着いたの!!!」
「入って!!」と勢いよくドアを開けて押される。
何をそんなに急ぐ必要があるんだ?
そう思って、ドアが閉まる音とともに後ろを振り返ると、
腕を後ろに引き拳を握りしめたヒルダが今にも襲いかかろうとしていた。
「「……」」
二人とも何も言えずに沈黙が続いた。
ヒルダは驚いた顔をしている。
私は残念な子を見る顔だ。
(ここまでバカとは思わなかった……)
「あのさ、ヒルダ……。こんなこと言いたくないんだけど……」
言いづらくて間が空く。
いや、でもこれは言うべきだろう。
意を決して口を開いた。
「人は…人は振り返るんだよ……?」
ヒルダの肩を掴んで言い聞かせた。




