15話「院長の不安」
院長の部屋で2人の声が響き渡っている。
「院長!なんで良いって言ってくれないのさ!!」
「何回聞いたところで認められません!色々問題があるもの!!」
もう何日目か分からない却下の言葉に、ついに私は噛み付いた。
言い合いの原因は、ユアンのお腹……いや、子供たちの成長のための、ご飯増量の件だ。
「なんでダメなの?簡潔に述べてくれる?」
今日こそ逃がさない。
椅子を引いて座ると、居座る気満々の私に院長は苦笑いした。
でも私も引き下がるわけにはいかない。
問題があるなら全部論破してやる。
「お金のことはわかりました。宛があるのよね?」
「そう。あ、一応言っておくけど健全だからね。その疑う目やめて」
もちろん、私はおじいちゃんの商会にアイデアを売るつもりだ。
この世界にない流行りそうなものなどいくらでもある。
それにあのおじいちゃんが食いつきそうなものだって。
「他の領地の孤児院が狙われたって事件を知らないわけじゃないでしょう?」
知っているしその言い分もわかる。
でもそんなものもう手遅れだろう。
「こんな大きい建物持ってってそれ言う?いかにもお金持ってますって言ってるようなもんでしょ」
「っ、それは!!」
「そんなに心配なら護衛でも募集したら?それも私が払うよ」
「そういう問題じゃないの」と院長はヒートアップした。
じゃあ一体何が問題なんだ。
ていうかとりあえず落ち着いて欲しい。
なにをそんなに焦ってるの。
「とりあえずダメです!!第一あなたに負担をかけるわけにはいかないわ……!」
(へぇ……そう言うこというの)
「院長、ここは私の家でもあるんだよ?改善して何が悪いの。
…………往生際が悪いなら私も遠慮しないよ?」
ニヤリと笑う。
私の様子を見て院長は顔を青くした。
ドアを開いて顔を出し、大きく息を吐いて叫んだ。
「おーい、みんなー!!!!院長がっ……んぐっ」
みんなを呼ぼうと叫んだ結果、
院長に後ろから口を塞がれ部屋に引きずり込まれた。
院長を睨むと、手が離れていく。
「ちょ、ちょっと!!!パメラ!あなた何するつもりなの!?」
青い顔をした院長が詰め寄ってくる。
「みんなに知らしめようと思って。子供たちの成長を妨げてても平気だって」
「そ、それは………」
院長は唇を噛み締めて俯いている。
悲しい顔をしているけど私は引かない。てか引けない。
ユアンがお肉を羨ましそうに見てるのを見ちゃったから。
「院長ごめん、やり方卑怯だった。
私もいじめたい訳じゃないんだよ」
ここまで言って許可できない理由はなんだろう。
昔から……何かを隠しているのは知っている。
けど、子供たちを宝物ののように思っている院長が許可しない理由は?
……いや、怯えている理由はなに?
「院長はずっと何に怯えてるわけ?」
院長の体が不自然に固まった。
「…っ」
次の瞬間、肩がビクリと跳ねた。
「それって子供たちより重要なの?それとも何かまずいことがあるの?」
「…………言えないわ」
院長は視線を伏せる。
迷子のように落ち着かない院長に、私はため息を吐いた。
「言えないならいいよ。聞かない。
でもやり方によってはユアンたちのために出来ることはあるはずだよ」
バッと俯いていた顔を院長は顔を上げた。
(できるの?って顔してる)
いい兆しみたいだ。
「ようはその謎の人?を刺激しなきゃいいんでしょ?」
「刺激しないって言ったって……」
不安そうな顔をした院長が私を見た。
そんな不安そうな顔をしないで欲しい。
(大丈夫だよ。ちゃんと正攻法でいくから)
「ちょーっと考えがあるんだよね。
だから院長が少しでも気になるっていうなら、私に付き合ってくれない?」
「……」
もう一押しみたいだ。
「それで院長がダメって思うなら諦めるよ。約束する。
だから……1回信じてみてよ」
「……ええ、わかったわ」




