14話「落し物と人助け5」
「ラナは、呪いにかかってしまったんだ」
真相を話し始めた、アイラさん夫婦の第一声はこうだった。
「呪い!?ど、どうして!?」
「なんだと……」
「そんな……ラナちゃんは大丈夫なんですか?」
(呪いの方か……)
怪我、呪い、誘拐の3つで迷っていた。
本当はわかってなかったんだけど、ハッタリが効いたみたいだ。
「とりあえずは大丈夫だ。でも……このまま行くと死んでしまうと教会に言われたよ。」
「なんでそうなってしまったの?」
「今日、ドミニクとラナがイーストの森に行ったのよ……」
イーストの森は名前のとおり、この街の東にある森の名前だ。
ここは冒険者にとって初級と呼ばれる森で、あまり強いモンスターは出てこないと言われている。
私はこれを少し前の井戸端会議の時に聞いた。
だからラナちゃんの身に何かあったんだろうと推測した。
「イーストの森?……まさかっ」
そんな森で時々出る厄介な魔物――
「ああ、カラスジュが出た。街には昨日の件で噂にはなっていないけどな」
カラスジュとは、真っ黒な羽を持ったカラスの魔物だ。
日本でも見たことない人はいないだろう。
あの、カーカーとなくカラスだ。
ちなみに、カラスジュの由来は、カラス+呪いからきている。
「大丈夫ということは解呪できた……のよね?」
「いいや……とてもじゃないが出せなかった…、魔力の消費が多いから高いんだとよ……」
「そんな……」
嫌な予感がする。というか予想とおりと言った方がいいんだろうか。
「いくらだったんだ?」
「白金貨一枚だってさ……」
(くそ教会め、だから嫌いなんだよ)
この世界は鉄貸、銅貨、銀貨、金貨、白銀貸、白金貨の五つがある。
その中でも、白金貨は平民では絶対にお目にかかれないレアな通貨だ。
前世で言うと千万くらいだろうか。
そんな大金、まだ若い彼等がポンと払うことは到底不可能だ。
「そんなっ、じゃあラナちゃんは……」
「ええ……ごめんなさいっ、アタシ認めたくなくてっ……ううっ」
「悪いのは全部俺だっっ!!俺が森につれて行ったばかりにあの子があんな目にっ!!!」
「なにか……なにか考えよう。俺たちも手伝う、きっと助かるはずだ……きっと……」
ままならない状況に拳を握り潰す。
今回は助けてあげられるだろう。
でも……この世のお金持ちじゃない人は、悔しい思いをした人も要るはずだ。
だって日頃、貴族の小さい傷には回復魔法を使い、いざという時にこの対応?
そんな無駄な魔力を消費するくらいなら呪いを治せ。
それとも無駄なことをするのが好きなわけ?
傷なんてポーションでも振っとけよ。
前世でもそういう面はあるにはあったけど……でも……
「腹立つ……」
「俺もだよ」
小声でも隣にいたユアンに聞こえていたみたいだ。
握り締めていた手の上から握られた。
とりあえず話しはまとまったので、椅子から立ち上がる。
「ごめんね、パメラちゃん、ユアンくん。こんな暗い話しちゃって」
「大丈夫だよ、むしろ無理矢理聞き出してごめん」
「俺も気にしてません。アイラさんなにか出来ることがあったらいつでも言ってください。すぐに駆けつけます」
「いいのよ。2人ともありがとう」
結局、許すことにしたライラさんたちと、アイラさんたちで、これから話し合うことにしたようだ。
私たちはもう遅いので急いで帰ろうと思う。院長が心配しちゃうから。
でもその前に――
「ライラさん、最後にラナちゃんの様子ちょっとだけ見てっていい?あ、起こさないよ」
「?ええ、いいわよ」
案内された部屋に、ユアンを連れて入る。
アイラさんには、話し合いの場に戻ってもらった。
「パム、どうするんだ?」
「教会はさ、たぶん払えないってわかってるんだよ。
でもお金は欲しいから、解呪も出来ない回復魔法を使って、進行を遅らせたんだろうけど――
腹立つから顧客を減らしてやろうと思って」
ニヤリと笑って、苦しそうなラナちゃんに向かって治癒魔法を発動した。
◇◇◇
「パム、アイラさんたちに何も言わなくて良かったのか?」
「いいよ。別に感謝されたくてしてるわけじゃないし」
「素直じゃないねパム」
ふふっとユアンは笑った。
「素直じゃないっていうか……解呪したってあんまり広められたくないって言うのもあるよ?」
黙っていなくなったんだ。
もし気づいたとしてもきっと察してくれるだろう。
それに友達だからこそわかる。恩人を売ったりする人たちじゃない。
「きっとパムのことだから、ほかに理由があるんだろう?」
「1番の理由は、家族を亡くすのは辛いから。
それに……親しい人がああいう理由で悲しんでるのは楽しくない」
「パム……」
それはもう孤児院の子供たちで散々見てきた。
出来ればもう見たくない。もう十分だ。
「あ、そうだユアン。ユアンもなにかあったら言ってね。私が助けてあげる」
「え?」
「幼馴染だし安くしとくよ?」
「…………」
あれ?反応がない。
もしかして迷惑がられた!?
「パム、俺お願いしたいことがあるんだ」
お願いしたいこと?一体なんだろう。
真剣な顔しているしなにか良くないことかもしれない。
え、もしかして、だらしないよ!とか怒られる!?朝ちゃんと起きろとか!?
「12歳になったら冒険者になれるだろう?その時、俺と一緒に冒険者のパーティーを組んで欲しい」
「え?私?他にも誘われてるんじゃないの?」
この世界では、12歳になると冒険者登録ができる。
正直、私としてはこのお願いは、願ったり叶ったりだ。
モテモテユアンを特等席で見学できるから。
でも、引く手数多なのに、わざわざこの私を選ぶとはもの好きというか、なんというか。
「そうだけど、パムがいいんだ」
「お目が高いね〜」
ユアンの腕をツンツンと指でつつく。
「そうだろう?ふふっ、俺パムみたいになりたいんだ」
「は?」
「パムってすごいことしているのに、なんでもない顔をするんだ。自分の損も考えないで、困ってる人に手を差し伸べる。昔からね」
(だいぶ美化されてない?)
「ふふっ、そんなパムに俺は昔から憧れていたんだよ。パムは気づいてないけど兄さんたちは知っていたよ」
「は?」
冷や汗が出てきた。何を言い出すんだ。
「ふふっ、パムさっきから「は?」しか言ってないよ」
「いや、言いたくもなるよ!!!さっきから美化しすぎなんだよ!!目覚ましなさい!!!」
ユアンの肩をガクガク揺さぶる。
私、力もあるし助けられるのに、使われるのが嫌だとか言って教会にも入んないんだから!宝の持ち腐れしてるんだよ!
「はははは!そういう所も好きだ。でも、自覚してくれ。パムは変人じゃないしずっとかっこいいよ」
「っっ」
これはもしかして、昨日落ち込んでたのを掘り返されてる?
「わざわざ慰めてくれなくてもいいのに」
「本心だよ。あの時は言えなくてごめんね」
ユアンは私に手を差し出した。
「ねぇパム、だから俺とパーティーを組んで欲しい。
憧れたパムと組むのが俺の夢だったんだ」
この光景を見た人たちは、ユアンをまるで王子様みたいだと言うだろう。
こんな王子様に願われたら、返事をしないのはもったいないと。
でも私は――
「憧れるのやめて!!荷が重い!!!」
全力で拒否させてもらう。
それに私に憧れて擦れたらどうするつもりだ。
純粋、誠実、鈍感これが揃ってるのも面白いポイントなのに。
そう思って断ったが、
意外としつこいユアンに何度も勧誘されることとなった。
「パム!一緒に冒険者になろう」
「せめて1日1回にしてくれない?」
「ふふっ、1回ならいいんだ?わかったよ」
「……あー、うん。いいよ(ん?あ、あれ?私、いつの間にか勧誘許可してない!?)」




