13話「落し物と人助け4」
「アイラ……」
「…………」
今、目の前では地獄の空間が繰り広げられてる。
簡単に説明すると、
ユアンが急いでアイラさんを呼び、
事情を聞いたアイラさんは夫を呼んできて、
話し合いをすることになった。
それでみんなで突撃して、
家にお邪魔することになり、
玄関に入るとアイラさん夫婦が土下座をした。
という経緯だ。
ちなみにアイラさんのお願いで、私たちは仲介をすることになっている。
「はいはい、とりあえず中で話した方がいいでしょ?アイラさん案内してよ」
「え、えぇ……」
いつまでも固まっている2組の夫婦に焦れったくなり、中に通すよう声をかける。
アイラさんたちは戸惑いながらも、動いてくれてやっとリビングに入れた。
案内された先にあった椅子に座り、
テーブルの上に手を置く。
「さて、じゃあ誰から行く?まずは犯人の言い分を聞こうか」
みんなが着席したのを見て、
アイラさんの夫、ドミニクさんに指先をを向けた。
「あ、あぁ……」と戸惑ったように返事をすると立ち上がった。
「すまない!!!!!取るつもりはなかったんだ!!」
「へぇー!じゃあなんでアイラさんの財布を持ってたの?」
また頭を下げたドミニクさんに、ニコニコしながら疑問を投げかける。
決して楽しんでなんかないよ?
声も弾んでいるのは、誰も話そうとしないから。
重い空気にならないように話してるだけだよ。
だからユアン。
その「しょうがない子」みたいな目を向けるのはやめてね。
私が話さなかったら地獄の空気だからね。
一生話し合い終わんないからね。
「そ、それは……落ちてたのを拾ったんだ……」
「なるほど、落ちてたのを拾って中身を抜き取ったんだ?」
「あぁ……すまない……!お前たちのものだって知らなかったんだ!!そうじゃなかったら取らなかった!!」
その言い分は感心できない。
知り合いじゃなかったら良いみたいな言い方じゃないか。
「騎士がそういうこと言っちゃう?それに相手が貴族だったら首刎ねられてるよ」
というと、ユアンから軽くコツンと腕を叩かれた。
まぁ拾った経緯はもういい。
やったものは仕方ないし、言ったところで何もならない。
それより気になることがある。
ドミニクさんは騎士だ。
安定している職業だし、なんで財布を盗む必要があったんだろう。
もちろん、お金に困っているというのは前提として、何か賭けをしたとか?
いや、でも私が知っているドミニクさんは真面目な人だ。
賭け事をするだなんてやっぱり考えられない。
「ねぇ、なんで盗む必要があったの?真面目なドミニクさんが盗みをはたらくって相当なものだと思うけど?」
「それは……」
それ以来、ドミニクさんは完全に口を閉ざしてしまった。
アイラさんも……俯いて唇を噛んでいる。
(なるほど……これが重要なんだ)
「じゃあ次アイラさん、このことは知っていた?」
「い、いえ、知らなかったわ。でも、帰ってきて大金を渡されてすぐにピンときたわ。だから詳しく聞いたら盗んだって言われたのよ」
(ドミニクさんの単独行動か)
ということは急に必要になった……って言うこと?
「なるほど、それを聞いてどう思った?」
「返しに行こうと思ったの。何があっても盗みはいけないことよ。それで特徴を聞いてみたら、ライラの財布だってすぐに気づいたわ」
「なんで?」
「お揃いで買ったものだったの。それに、ストラップも一緒なのよ」
アイラさんは自分の財布のストラップを揺らした。
可愛い花の形がひらひらと舞っている。
「はい、じゃあこれを聞いて、ライラさん、オーギルさんはどう思う?」
こういうのは被害者二人の意見が1番重要だ。
「そうだな……俺は返す気があったみたいだから気にしていない」
「私もよ。でも……なぜそういうことをしちゃったの?それは私にも言えないことなのかしら?」
「…………」
アイラさんまで黙ってしまった。
(言えない理由ってなんだろう……?)
法に触れること?それとも詐欺で騙されたとか?
でも、騎士のドミニクさんが騙されるっていうのも考えにくい。
普段取り締まる側の人間が騙されるっていうのは現実的じゃないだろう。
となると他の理由……何か違和感があるところ……
リビングを見回してみるけど、特に何も違和感はない。
(まぁ簡単な場所にあるわけないよね)
じゃあ昼間はどうだっただろう?アイラさんの様子にどこかおかしいところはなかっただろうか。
噂を聞きに来て、それからユアンとおやつを食べて、婿に来てほしいって……
(あれ?ラナちゃんは?)
アイラさんの娘のラナちゃんが見当たらない。
これだけ騒いでいるのに姿は見えないのはおかしい。
あの子はアイラさんに似て活発で元気な子だ。
騒動になって大人しく引っ込んでいるタイプでもない。
となると……
「ねぇねぇ、言いづらいなら私が当てていい?」
「え?」
「ラナちゃんに何かあった?」
考えられるのはこれくらいしかないだろう。
「っ!?」
「当たったみたいだね?」
目を大きく見開いた二人を見て確信する。
それにしても隠しているのに、反応がわかりやすすぎる。
ドミニクさんなんて騎士のはずなのに大丈夫なのだろうか。
「ア、アイラ!ドミニクさん!どういうことなの?ラナちゃんに何かあったの!?」
「……それは……っ」
ライラさんはアイラさんの肩を掴んだ。
ここまで来てまだ黙っているつもりみたいだ。
「言っちゃいなよ。往生際が悪いよ」
「こら、パム」
ユアンが咎めて来るけど辞める気はない。
だって……この問題って私がどうにかできるかもしれないから。
「これだけ人いるんだよ?なにか奇跡が起こるかもしれないよ?
それとも……
また私が当ててみせよっか?」
二人を煽るようにわざとニヤリと笑いかける。
こうでもしないと、この二人はいつまでも口を開かなさそうだ。
「ドミニク……もう言いましょ。パメラちゃんはもうわかっちゃったみたい」
こちらを見るアイラさんの顔は、諦めがついたような顔をしていた。




