12話「落し物と人助け3」
(なんかあったよねー。探し物を探すみたいなさー)
あれからずっと引き摺られている。
重くないのかと疑問に思って、ユアンを盗み見る。
私を引き摺っているのには気づいていないみたいだ。
真剣な顔をして前も向いて走っている。
ユアンにとっては私の全体重を乗せても微妙な差らしい。
それなら遠慮なくこのままでいさせてもらおう。
お礼にユアンには後で頼もしいゴリラの別名を授けたいと思う。
それよりも問題は魔法だ。
こういう時に使えそうな魔法が何かあったはずだ。
なんかこう……
ああ、ダメだあと一歩なんだけど出てこない。
なんか段々ムカついてきた。
こうなったら何がなんでも思い出してやる。
せっかく前世の知識を思い出したのに、こんな状態のままでなんていられない。
せめて、今のこの思い出せない魔法だけでもなんとしてでもモノにしてみせる。
(あっ!ゲームでもしてみようかな)
マジカルバナナなんていいんじゃないだろうか。
バナナと言ったらゴリラ!ゴリラと言ったらユアン!
みたいな連想ゲームだ。
今やることもないから、早速やってみようと思う。
まずは探し物……んーまずは家の中で限定してやってみようかな。
探すと言った部屋!
部屋と言ったら家!
家と言ったら住所!
住所と言ったら地図――
(これだよこれ!!地図だ!!)
異世界もので定番の「なぜか地図がわかる」の存在を忘れていた。
これがあればダンジョンも、魔物の出現にも対処できるという代物だ。
この世界でも探索の魔法は知られている。
ていっても人によって魔法の効果が違う。
気配がわかる人もいれば、透視のように見える人もいる。
(この世界の魔法って本当にどうなってんの?)
なんでみんなオリジナリティがあるのかわからない。
それに、地図の存在は紙でしか聞いたことがないし、
ダンジョンでもマッピングをするのが基本という話を聞いたこともある。
探索があるのになんで地図の魔法がな……ん?……
あああ!!探索だ!!
地図上で宝箱とかも表示されるRPG、異世界ものがあったはずだ。
……やってみよう。これができたら冒険者になった時にも役に立つ。
視線をキョロキョロさせて、誰もいないか確かめる。
人はいないみたいだ。
それなら無詠唱で発動しても大丈夫だろう。
頭の中で、私のイメージした未来感のあるマップを思い浮かべる。
よくある、何もないのに映像が浮かんで見える。というあれだ。
思い浮かべたら、次は魔力を流して発動――
目の前に透明なスクリーンが出てきた。
画面上には、今通っている道や曲がり角の先まで繊細に表示されたマップが出てきた。
自分の居場所は水色の丸で表記されているみたいだ。
その上でもう一度、マップに探索魔法を思い浮かべて発動すると、赤色の丸いマークが点滅して見えた。
これも成功したみたいだ。これで思い出せないモヤモヤから解放された。
(どれどれ、早速ユアンの正確さを試してみようかな〜。う、うわぁ……)
ドン引きするのも許してほしい。
だって目の前のマップ上に青い丸が赤い点滅マークに着々と進んでいる。
もうすぐ目的地につきそうだ。いや、もう着くね。
「パム、ここみたいだ。……え?なんで引き摺られてるんだ?」
目的地について、後ろを振り向いたユアンは私の格好を見て固まった。
そして視線を私の足の方に向けたと思ったら、次は瞳が見開かれた。
不思議に思ってユアンの視線の先に目線を向けると、引き摺られてボロボロになった靴が見える。
「やっちゃった!!!院長に怒られるよー!!!めんどくさ……いや、すみませんでした!!!」
孤児院の経営状況もわかっているから悪態をつくのはやめた。本当に申し訳ないと思っている。
私も少し焦ってしまったが、もっとひどいユアンの様子を見て冷静になる。
「怒られるとかじゃないだろうパム!!!それより怪我は!?」
「ないよ。痛くないし、気づかなかったくらいだから」
青い顔で身体検査までし出した。
靴を脱がせるのはわかる。
でも全身くまなく見始めたのはなんで。
ユアンを止めようと声をかけるけど無視される。
「おーい、そこは怪我してないけど……?」
「信用ならないよ。昨日も怪我をしてたのに動いてただろう?」
「…………」
ついに信用を失ってしまったみたいだ。
この優しい男にここまで言わせてしまって申し訳ないという気持ちはあるが、新しい魔法が思いついたので発動する。
誰もいないのでこれも無詠唱でいいだろう。
魔法をかけるとみるみるうちに靴が元に戻っていった。
これは、修復魔法というやつだ。「時を戻して直す」という便利なやつ。
「あー直った。よかった……」
「全然よくないよ。怪我するところだったのわかってるのか?」
にこやかにこちらを見て笑っているが、その笑みに少し寒気がする。
優しい人を怒らせてはいけないとはこういうことかもしれない。
でもこの原因はユアンにあるんだから怒られる筋合いはないと思う。
「わかってるよ。これはユアンがゴリラで足が早いから」
「ゴリラってあの伝説の?」
「そう、あの伝説の」
この世界では動物はいない。というより恐竜みたいな扱いになっている。
全て絶滅したか、魔物化したかだ。
だから、伝説の生き物として語り継がれている。
そのひとつがゴリラだ。
ゴリラは力が強く、どこからともなく森に迷った人を救いに来る心優しい動物だった。
まさに森のお巡りさ…騎士さんとして語り継がれている。
(あれ?ユアンにピッタリじゃない?)
「……いや、それより財布だよ!危ない、忘れてた!」
「はぁ……わかった。あとで話そう」
とりあえず今は、逃げ切れたみたいだ。
「絶対だよ」と言っているユアンからさりげなく視線を逸らす。
(感謝します。盗人にも役に立つところはあった)
「あれ?」
見覚えのある家に首を傾げる。ここって……
「パメラどうかした?」
「いや、ここって……アイラさんの家なんだけど……」
財布を盗まれたライラさんの双子の姉のアイラさんの家だった。
「ということは……ライラさんの財布を盗んだのは」
「アイラさんの旦那さんってことになるね。
……ユアン、ライラさん呼んできてくれる?」
「ユアン、無我夢中になるの気を付けてね。私だからよかったけど」
「うん、気をつけるよ。でもパムも危ないからもう止めてくれ」
「え?ダメ?結構楽だったんだけど」
「ダメ」




