11話「落し物と人助け2」
「ユアンそっちはあった?」
「いや、こっちも見つからなかったよ」
早速、ライラさんが通った場所を手分けして探した。
でも、聞いていた水色の財布はどこにもなかった。
ユアンの方にもなかったとすると、悔しいが誰かが取ったあとの可能性が高い。
(こういう時の魔法ってなんかあったっけ……?あった気がするんだけどなぁ……)
魔法に頼ろうと考えてみるが、肝心の魔法を思い出せない。
如何せん、異世界ものを読んでいたのなんて10年以上前だ。
それにしたって、物忘れみたいなこの現象はどうにかならないものか。
ほかの異世界ものでは、みんな普通にチート能力を使ってるのにどうしてこうなった。
変にリアルにしなくていいんだよ。体は若いのに物忘れは激しいみたいな変な要素残しやがって。
と神様につい文句を垂れたくなる。
「すみません、おじさん!落としましたよ!!」
心の中で神に向かって文句を言っていたら、隣にいたはずのユアンの声が下から聞こえる。
不思議に思って視線を向けると、座り込んで誰もいない空間に向かって手を差し出していた。
手には財布を持っているから、どうやら落とし主が気づかずに行ってしまったみたいだ。
人混みが多い市場で落とし主を見つけることは難しいだろう。
それは騎士にでも預けるしかない、そう思いユアンに声をかけようと思ったが……
「ユアン……それ水色の財布だよ。ライラさんのものじゃない?」
聞いていた特徴とそっくりの財布が、ユアンの手にあった。
ユアンは運までいいみたいだ。
「……本当だ。でもおかしいな。さっき落とした人は男性だった」
「中身ある?」
開けた財布を覗き込むと、一銭も入っていなかった――
二人で走り出して犯人を追う。今度は置いて行かれなかった。
「ユアン、どんな特徴だった?」
「上は長袖で青。下は黒。髪は短髪の茶髪だった。後ろ姿しか見てないから顔はわからない」
「……ユアンに任せた」
特徴がなさすぎて見つかる気がしない。服なんて脱がれたら終わりだ。
ここはユアンに任せるしかなさそうだ。
本人は「任せて」と自信ありげな返事をしているから。
「見つかると思う?」
「わからない。でも……俺『かくれんぼ』は得意なんだ。」
「わっ!!!」
「ついてきて!」と突然手を引っ張られる。
着いてくのはいいんだよ。いいんだけど!!!!――
力強いし早いって!!
少し手が痛くて、思わずユアンを見るが本人は真剣そのものだった。
その姿を見て、振り払うのは諦めた。
代わりに強化魔法を使う。
これで難なく着いていけるようになったし、強い力も痛くなくなった。
強化魔法は身体向上だけでなく、防御のような役割も担っているみたいだ。
以前は深く考えずに使っていたけど、今は使えば使うほど便利で、魔法が手放せない。
(楽する為にもっと習得しなきゃ)
そういえば、ユアンは昔から力は強かった気がする。
それにかくれんぼで思い出した。
小さい頃、孤児院のみんなでかくれんぼをして遊んだ。
私は、変な場所に隠れたり、魔法で隠れたりして兄たちでは見つけられなかった。
それを、速攻見つけたのがユアンだ。
あの時は悔しくて何度も挑戦を挑んだが――結局全敗した。
なんか思い出したらムカついてきた。
また戦いを挑むことにする。
今度こそは勝ってみせる――けど今は……
(一体どこに向かってるんだろ……)
市場から抜けて、ユアンはどこかに向かっている。この方角的に、住宅街だとは思うけど……。
(もういいや…ユアンに連れて行ってもらおう)
走るのに飽きてきた私は、両手でユアンの手を握って力を抜いて身を任せた。




