ウルフダッシュ
オレの安らかな眠りは突如終わりを迎えた。
体がベッドから何者かに引きずり落とされたのだ。
背中から受け身も取れずに落ちたから痛い。
「痛いな、誰だよ。」
見上げるとプラータさんがそこにいた、犯人は彼女だったみたいだ。
『朝よ、特訓を始めましょう。』
朝?まだ外は真っ暗だ。
『あの、オレが寝てから何時間ほど経ったんですか?。』
『大体2時間ぐらいね。』
2時間なんて普段の4分の一程度だ、寝た内に入らないと思う。
『全然、寝れていないんですけど。』
『そのベッドには自己回復力上昇の効果があるから2時間で十分よ。』
オレは床を引きずられ、部屋から連れ出された。
『自分で歩くからやめてください。』
『なら早く立ちなさい!。』
オレは慌てて立ち上がった。
外はまだまだ暗く、太陽ではなく月がオレに光を与えてくれている。
どう考えても夜だろ。
プラータさんの姿も薄らとしか見えない。
『イリスは連れてこないでいいんですか?。』
『これからは勉強以外は個別メニューよ、一人ずつ教えるわ。』
個別メニューか、なにをするんだろうか。
『今から村の外周を走ってもらうわ。』
意外と普通だった、体力づくりか。
たしかに基礎体力は大事だよな。
オレは村の外に向かおうとしたが、プラータさんに引き留められた。
『ただ走るだけじゃ駄目よ、もうすぐあなたを鍛えてくれる子が戻ってくるわ。』
誰だろうか、手加減を知っている人がいいのだけど。
村の外を眺めていると、月の光に反射してなにかが光るのが見えた。
それは高速で村に迫り、ついにオレの目の前に到達した。
狼だ、銀色の毛に包まれており、とにかくでかい。
約170cmあるオレと目が合うほどだ。
まさか、こいつがオレを鍛えるのか?。
『この子はシルバー、私の相棒よ。』
『これからこの子と追いかけっこをしてもらうわ。』
『本気ですか?。』
『冗談を言う時間の余裕はないわよ、もちろん手加減してもらうけど、捕まったらひどい目に逢うから全力で逃げなさい。』
狼の口からは大量の涎があふれ出ている、まさか喰われるとかはないだろうが、絶対に捕まりたくない。
『それじゃあ、スタートしなさい。』
オレが考え込んでいるとスタートの合図として手をパチンと叩いた。
慌ててオレは村の外に向かい駆け出した。
どのくらいのペースで走ればいいんだろうか?。
オレは後ろに振り返り、狼との距離を確認しようとした。
振り返って見えた視界は銀色だった。
間違いなく狼の体毛だ。
すぐそばに来ていたのだ。
まずい!
これはランニングじゃない、ダッシュだ。
ランニングのペースで走ったら駄目だ。
振り払うために速度を上げていった。




