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勉強

 無事に教えを乞うことができるようになって、一安心だ。

早速修行を始めるらしい。

望むところだ。

『今日は座学だけにして明日から本格的に始めましょう。』

 プラータさんはそう言い、書庫から二十冊ほどの本と木の水差しとコップを持ってきた。

中は透けていないので見えないが、上から覗き込んだら薄い緑色の液体が入っている。

お茶だろうか?

 

『まずあなたたちが身に付けなければならないのは言葉よ』

『これがなければ、外の世界で生きていくなんて夢のまた夢ね』

 パーティーブレス頼りから脱却するには必要なことだ。

昨日と今日使ってみて分かったのだが、パーティーブレスを使った会話はかなり寂しい。

やはり声を聴いて話したくなる。



『イツキ君たちが覚えなければならない言語は最低2つよ』

『2つですか?』

『獣人の言葉と人間の言葉の2つ、これさえできれば世界中を旅することが出来るわ』

 数は地球より少ないな、地球を言語の不自由なく旅するにはもっと数が必要だろう。

だが、一カ月で二つの言語を覚えるのは多すぎないか?

『大丈夫よ、私の手にかかれば一言語二週間でマスターできるから』

何の根拠があるかわからないが、絶対的な自信を感じられた。



『まずは獣人語を覚えましょう』

『獣人が使う言葉は実はいくつもあるの』

『オールが属するティーグル族と私が属するループス族では言語が違うの』

『それをこのミーノック獣王国の前身の獣帝国がまとめたの』

『獣帝国?』

 帝国か、あまりイメージが良くない名称だ。

『世界で初めてできた獣人たちの国よ。初代獣帝がバラバラだった氏族たちをまとめ上げてできた国なの。身体的特徴がそれぞれ異なる獣人たち全てが発音できるように考えつくされた言語よ。』

発音がしやすい言語とはありがたい、リスニングでいつもつまずくのだ。



『それじゃあ、始めるわね。』

 プラータさんが一冊の本を開き、オレ達に見せてきた。

その本にはオレが調べた31種類の文字が書かれていた。

……ショックだ。せっかくあんなに頑張って調べたのにメモが無駄になった。

プラータさんは本の一番左上の文字を指さし、発音する。

リピートしろということか。

オレも続いて発音し、それに続いてイリスも発音する。



 31個の文字の発音を3周ほどしたところでプラータさんはオレに問題を出してきた。

『これの発音は何?』

急な問題に対応できない、プラータさんは指を広げ一つ一つ折りたたんでいく。

時間制限か。

オレが悩んでいる間に時間切れになってしまった。



『少し疲れてるのかしら、これを飲んでスッキリしなさい』

 プラータさんは持ってきていた飲み物をコップに注ぎ、オレに渡してきた。

鼻を近づけて匂いを嗅いだ、少し甘い匂いがする。

糖分補給か、そう思いオレは一気に(あお ) った。



 初めに感じたのは強烈な渋味だった。

次に苦味が舌に襲い掛かる。

不味すぎる!

オレは本やプラータさんにかからないように顔を背け、毒霧のように噴き出した。



『なんですか、これは!』

『エチアの実の皮を煎じて作ったお茶よ、記憶力と集中力が付くの』

 それにしても不味すぎる、芸人の罰ゲームを体験した気分だ。

二度と飲みたくない。

『これから時々問題を出すけど間違えたら、罰として飲んでもらうわ』

絶対に気を抜けない!

恐怖の授業が始まったのだった。

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