懇願
オレは食事をゆっくりと味わった。
イリスはすでに食べ終わっているので、オレの分を欲しがっている。
声には出さないが、その目は虎視眈々とオレのパンを狙っている。
しょうがないのでパンを半分にちぎり、イリスに渡す。
すると、プラータさんがオレとイリスのスープを追加してくれた。
イリスは丸わかりだが、オレも足りてないと思っていたのを感じ取っていたみたいだ。
どこで分かったんだろう?。
腕のパーティーブレスを見た。
ひょっとして漏れたのかな?。
『表情を見ればわかりますよ。』
そんな表情をしていたのか。
少し恥ずかしいな。
オレは顔を隠すように俯きながらスープを飲んだ。
オレはイリスの分と合わせて皿を台所に運んだ。
洗い物ぐらいはしようと思ったが、プラータさんは自分の仕事だと言って譲らなかった。
台所は一部の女性にとっては聖域のようなものらしいのであまり触れられたくないのかもしれない。
オレは床に正座し、プラータさんが戻るのを待った。
これからお願いをするので椅子に座って待つのは適当ではないと思ったからだ。
イリスもオレの横にいる。
しばらくしたら、プラータさんが部屋に戻ってきた。
オレの姿を見て驚き、硬直している。
『プラータさんにお願いがあります。』
『なんでしょうか?。』
『オレにこの世界で生き抜く方法を教えてください!。』
そしてオレは手を床につき頭を下げる、いわゆる土下座だ。
オレの横でイリスもオレの真似をして土下座をしている。
オレがこの世界を旅するには足りないものが山ほどある。
まずは言葉だ、パーティーブレスがあるから今は意思疎通ができるが、外ではそれがない。
必ず習得しなければならないことだ。
次に生活能力だ、野営術や町でお金を稼ぐ方法、オレの見立てが正しければ彼女はその術を身に着けているはずだ。
最後に最も重要なのは戦闘能力だ。
ロストであるオレはこの世界の人たちが使う方法では強くはなれないだろう。
だが彼女はロストが強くなる方法を知っていると思う。
なぜならロストについて詳しいからだ、おそらく身近な人間がロストだったのだろう。
もし知らなくても、プラータさんの戦闘技術を身につけることができれば、生存率も上がる。
スキルや魔法、あらゆることに詳しい彼女の知識を身につけることが今できる最善の選択だと思う。
贅沢をいえばオールさんからも戦闘技術を学びたいが、その狂気が二の足を踏ませる。
返答がこない、駄目か?
その時、玄関ドアから破壊音が聞こえた。
玄関の方を向くとドアがオレに向かって飛んできている。
避けないと!
慌てて、立ち上がろうとしたが、正座していたためうまく動けない。
ドアはオレに当たる寸前にプラータさんによって叩き落とされた。
まったく見えなかった・・・
逆方向にいたはずのプラータさんが瞬間移動のようにオレの目の前に現れたのだ。
スキルか?・・・もし違うならオレも身につけておきたい。
プラータさんから強い怒気を感じる。
それに気づかず、ドアを吹き飛ばした犯人であるオールさんはオレ達に近づいてくる。
『ならば、儂らの弟子になるのじゃ!!!。』
さらにオールさんはなにかを続けて言おうとしていたがプラータさんが阻止した。
アイアンクローだ、まるで万力のような頭を締め付けている。
『イツキ君、ちょっと待っててね。』
オレは頷くしかなかった。
オールさんは頭は鷲掴みにされたまま奥の部屋に引きずられていった。




