朝練
オレは朝日が昇る前に起きた。
イリスを置いてベッドから出ようとしたが、失敗して、起こしてしまったようだ。
「ごめん、少し出てくる、寝ていていいから」
「僕も行くよ」
イリスはふらつきながらベッドから出てきた。
眠そうだ、オレはイリスを抱き上げる。
どうしようか……これからすることがあるから相手することができない。
オレは椅子をリビングから拝借してきた。
その上に布団でイリスを包んで乗せて、背もたれにコートを掛けた。
さらに二つのパーティーブレスを指に引っかける。
オレはイリスをその状態で外まで運んだ。
結構重かったし体勢も悪かったが、そんなに時間はかからなかった。
外はまだ薄暗いが、これぐらいなら問題ない。
オレは村の中央に椅子を降ろした。
椅子の上にわずかに空いているスペースにパーティーブレスを置く。
布団の中でイリスはまどろんでいる。
オレの事を気にしないで部屋で寝ていればいいのに。
さて、始めようか。
その前に上半身の服を脱ぎ、軽く折りたたんだ。
汗をかくからだ。
目を閉じ、記憶を呼び覚ます。
白の記憶だ。
その最期の演武をオレは鮮明に思い描ける。
魂に刻み込んでいるからだ。
そして、白はオレの脳内でイメージとなり蘇った。
イメージはあの日と寸分違わず、同じ動きをしている。
オレはその動きを確認する。
そして、一通り確認した後、オレは模倣を始めた。
ゆっくりと、正確に、力強く。
スポーツのリプレイをスローにしたみたいにオレの動きはゆっくりだ。
少し動くごとにその動きが正確かどうかを確認し、その意味を考える。
その間、力は緩めない、必要のないところで力を抜くと動きが狂ってしまうからだ。
このペースで行くと一周するのにも20分近くかかってしまうだろう。
だが、手は一切抜かない。
一手一手熟考しながら進めていく。
これでやっと三周目が終わった。
全身から汗が噴き出ており、ズボンが肌に纏わりついていて気持ちが悪い。
汗が出るのは仕方がないことだ。
白の技は全身を行使する、ゆっくりでも力を入れ続けているので相当疲れる。
最初に決めていた目標は10周だが、完遂できるだろうか。
七周目が終わった時には、太陽は姿を現しており、木々の間から差し込む朝日がオレの体を照らした。
一周目と七周目で周回タイムは短くなっているのだろうか。
まだ始めたばかりだ、おそらく一秒も短くなってないだろうな。
何も考えずに真似るのではなく、考えながらなので精神の疲れも大きい。
オレは両手で自分の頬を張り、気合を入れなおした。
あと三周だ、頑張ろう。




