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恩人

『オレが戦ったので村の建物を壊してしまいましたが。』

『恩人とはどういうことでしょう?。』

 結構派手に壊したはずだ。

壁に穴開けたり、干し草をぶちまけた。

その多くは白がやったことだが、すでに白はいない。

壁に穴を開けた主犯は白だが、原因はオレがふっとばされて壁にぶつかったからだ。

言うならばオレは共犯者のようなものだ。

どう考えても恩人ではないだろう。



『村という器が壊れても中身が無事なら村は蘇るわ。』

『中身・・・ですか?。』

『そこに住んでいる人、村人よ。』

『建物が壊れても直せばいいけど、人はどうにもできないわ。』

『この村の人たちは今、森を出たところにある町に避難しているのよ。』

『もし奴がこのまま森に居座り続けたら、彼らは戻ってくることができないの。』

『奴が出ていくまで待っている間に、避難している町に村人が根づいてしまったら、この村は死ぬわ。』

 そんなのまた戻ってくれば済む話じゃないのか。

その疑問にプラータさんは気付いたかのように、説明してくれた。



『昔、ある村で危険な魔物の出現によって一時的な避難のために人がいなくなったことがあるの。』

『その村は無くなってしまったわ。』

『魔物が去っても村人の多くが村に戻ることがなかったのよ。』

『村人たちは避難先の町に根づいてしまったの、町の中で仕事ができたり、恋人ができたりしてね。』


 そういうことか。

日本でも災害にあった人たちが避難した場所から、帰ってこなくなるのと一緒だ。

『あなたが倒してくれたおかげで、私たちはすぐに戻ってくることができるわ。』

『村が無くならずに済んだのよ、ありがとう。』

 プラータさんはオレに正対し、頭を下げた。

オレは慌てて、頭を上げさせようとしたが、なかなか上げてくれなかった。

本当に誇れることなんかしていない、ただオレは自分のために戦っただけだ。



 何とか頭を上げてもらったときには、窓から射し込んでいた夕日はすでに消えていた。

日が沈んだようだ。

プラータさんは壁に掛けられているランプに明りを灯してくれた。

ランプも魔道具なのかもしれない、火を使っていないようだ。

もしくは、食料庫にあったランプと同じように色が違う光る石が入っているのかもしれない。

『そろそろ休みなさい、続きはまた明日話しましょう。』

『分かりました。』

 プラータさんはオールさんの足を持ち、床から引き抜いて部屋から出ていく。

頭が床に引きずれている、後頭部が禿げそうだ。



 父さんならマジ切れしていたな。

父さんは禿げ予防をしているのをなぜか家族に隠している。

発毛シャンプーを普通のシャンプーの容器に入れ替えて使っているのだ。

深夜に入れ替えているのを目撃してしまったときの気まずさときたらもう。

男の約束で隠しているが、契約料をいくらかせしめたのは記憶に新しい。

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