匂い
『さて、ようやくできるようになったようじゃな』
口火を切ったのは男性だった。
『儂の名前はオールじゃ、この村の副村長じゃ、見ての通り、ティーグル族じゃ」
ティーグル族?、虎耳の一族のことだろうか。
だが、聞くことはやめとこう、異世界人の扱いがわからない現在では、それを悟られる行動をするべきではないだろう。
しかし、奇妙な感覚だ、言葉が通じなくても他者の言いたいことが頭に浮かぶこの感覚は。
『私はプラータよ、よろしくね』
犬耳の女性はそれに続き、自己紹介をした。
『オレの名前はイツキです、こいつはオレの相棒のイリスです』
『イリスです、ごはん美味しかったです、ありがとう』
『あんなので良ければ、また作ってあげるわ』
『本当!?』
イリスとプラータさんは食事のことで盛り上がっている。
その間にオレはオールさんに聞かなければならないことがある。
『ここはどこなのでしょうか、森の中で遭難してしまって』
『ここはミーノック獣王国の端にある、暴熊の森じゃ』
聞きたい単語が多いが、聞くことが出来ない。
どうにか遠回しに聞けないかな。
その苦悩はあっけなく解消された。
『お主、異世界人じゃろ?』
ドキッと心音が大きく鳴った。
『何のことでしょう?』
『とぼけんでもいい、わかっておる』
どうやらバレバレみたいだ、なぜだろう。
『匂いが違うのよ』
イリスの相手をしていたプラータさんがオレの疑問に答えてくれた。
オレは観念した、これ以上とぼけ続けるの無理そうだ。
『オレはたしかに異世界人です、数日前にこの世界に来ました』
『やはりそうか、安心せい、儂らは異世界人だから危害を加えることはせん』
『申し訳ないのですが完全には信用できません、ですが治療や食事を用意してくれたことは感謝します』
かなり失礼だと思うが、オレは自分の身だけではなく、イリスも守らなければならない、簡単に警戒を解くことはできなかった
『当たり前のことじゃ気にせんでいい。もし完全に信用していたら、怒鳴っていたところじゃわい』
『異世界人を奴隷にしようとする奴らもおる、初対面の人間を安易に信用しないのはこの世界じゃ当たり前のことじゃ』
オレの失礼な物言いに不興を買うことはなかった。
オールさんの器の大きさに感謝しよう。
『ありがとうございます』
異世界人であることがばれてしまったがこれで心置きなく質問することができるな。
気になることが多すぎる、何から聞こうか。




