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幕間 灯が消えた家

 一人、リビングで食べる朝食はとても寂しかった。

妻に任せきりにしていたため、パンを焼くことしかできなかった。


 ニュースで事件のことをコメンテーターが訳知り顔で語っている。

爆発事故かそれとも地割れか、はたまた宇宙人の仕業か。

腹が立つ、僕はチャンネルを回すがどれも同じだ。

僕はテレビの電源を消したが、またすぐに点けた。

静かなのに耐えられなくなったからだ。

ほんの一週間前までは三人の子供たちと一緒に食べていたのに。

妻ともう一人の子供はもっと早い時間に起きて食べているらしいけど。


歯を磨くために洗面所に向かう。

鏡に映る自分の顔は涙で腫れ上がりひどいものだった。

一家を支える大黒柱がこれとは最悪だ。


 「満花(みつか)、僕はもう会社に行くよ」

 自分の部屋に閉じこもっている妻にドア越しで話しかける。

子供たちがいなくなってから彼女は部屋にこもったままだ。

あの悪夢の日から今日で一週間が経つ。

妻に付いていてあげたかったが、会社を休み続けるのも今日で限界だった。

僕が責任で進めている仕事があるため行かないといけない。


「いってきます」

 妻の声も息子の声も娘の声も返ってこない。

言って後悔した、余計寂しくなり、涙が溢れてくる


 ドアを開け、外に出る。

太陽が僕を迎えた。

まともに浴びたのは悪夢の日以来だ。

けたたましいブレーキ音と共にその光が遮られた。

家の前にミニバンが止まっている。

また、マスコミか、いい加減にしてほしい。



 車のドアから出てきたのは女性だった。

どこかで見た気がする、誰だっけ?

彼女は後部座席のドアを開けた。

そこから出てきた何かに僕は押し倒されてしまった。

顔をペロペロと舐められる、よく見れば柴犬だ。

「お前、リキか!?」

「ワンッ!」

間違いない、イツキの愛犬のリキだ

ということはこの女性は妻の姉の……


「邪魔するわね」

 義姉さんは僕の脇を通り、家の中に入っていった。

慌てて、追いかけようとしたがリキにのしかかられているのでうまくいかない。


「満花!部屋から出てきなさい!」

 義姉さんは妻の部屋の前にいた。

ドアを力づくで開けようとしているがもちろん、開かない。

すると義姉さんは車に戻っていった、なにをするつもりだろうか?

戻ってきた義姉さんは解体工事に使われるような大型ハンマーを手にしていた。

「義姉さん、やめてください!」

羽交い絞めにして止めようとするが、男性の僕の力を物ともせずに、ハンマーをドアに振り下ろした。


 たった一撃でドアに大穴が空き、そこから手を突っ込み、義姉さんは部屋の鍵を外した。

部屋の中には妻が布団に包まり、蹲っている。

久しぶりに見る妻の顔は僕以上に涙で腫れており、突然現れた実の姉の姿に戸惑っていた。

「雪お姉ちゃん?」

義姉さんはそんな妻に近寄り、胸倉を掴み無理やり立たした。

「あなたはなにやってるの!、あなたがそんなんじゃ子供たちが戻ってきたときどうするのよ!」

「もういないのよ、子供たちは帰ってこないの!」

「まだわからないじゃない!、信じて待ちなさい、あなたは母親でしょ

妻の瞳に涙が溜まっていく。

すぐにそれは決壊し、溢れ出した。

「おねえぢゃぁぁぁん!!」

妻は義姉さんの胸の中で顔を埋め、泣きじゃくっていた。


 凄いよ、一発で家の空気を吹き飛ばした、男の僕が情けない……

さすがはイツキの憧れの女性だ。

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