終幕
その一撃は高速で放たれる。
当たる瞬間、イリスは噛みつくのをやめ、飛びのいた。
激突、凄まじい打撃音が辺りに響いた。
白はオレと同じように吹き飛ばされる。
いや、違うかオレの方が派手にふっとばされていた気がする。
オレの再現度ではあれだけの威力を出すことはできなかった。
「やったね」
「まだだ、早く戻れ!」
まだ殺気は消えていない。
現に白は立ち上がろうとしている。
イリスは再び、オレと一つになった。
満身創痍。
白の体はまさにそうだった。
オレが与えた頭部の亀裂はさらに大きくなっており、イリスの【破壊】の噛みつきによって肩にも穴が開いている。
さらに腹部には無数のヒビが入っていた。
だが満身創痍なのは、オレ達も一緒だ。
右腕は折れているし、左腕もヒビくらいは入っているかもしれない。
体の異常を挙げていけばキリがない。
イリスもあと一回しか【破壊】を使えないだろう。
「決着をつけよう」
オレの拳に【破壊】の力が集束していく。
イリスもこれで決着が着くと考えていたようだ。
最後の一撃はやはりこれだろう。
思えば、始まりもこの技だった。
白も鏡に映る鏡像のようにオレと同じ構えをしている。
緊張で心臓が爆音のように鳴り響いている。
大きく深呼吸をして、息を整える。
心の準備はできた。
白はとっくに準備完了している。
そんな白がおもむろに自分の右足を指差した。
なんだ?
意味が分からない、何が言いたいんだ。
オレは自分の右足を見た。
微妙な違いだった、足の角度がずれていたようだ。
慌てて修正する。
白は今度は右肩を示していた。
確認するとオレの肩は少し前に出すぎている。
何度も間違いを指摘され、その都度修正していく。
これで完璧だろう。
そう思って白を見ると首を横に振っている。
まだ足りないのか?
白は手を前に出し、中指を丸め、親指でそれを抑えてる。
そして、指を弾いた。
デコピンだ、何が言いたいんだろう?
オレも同じように何度もデコピンをする。
『溜めろってことじゃないの?』
なるほど、そういうことか。
デコピンは溜めがあるために威力がある。
集めた力をすぐに解放するのではなく、溜める。
これがオレに足りなかったものか。
「イリス、今までありがとう」
『どうしたの?、縁起でもない』
「言っておきたかったんだ」
『聞かなかったことにしておくよ、終わってからもう一度聞かせて』
「わかったよ」
決着が着く前の最後の会話は終わった。
白はその間待っていてくれた。
白は小さく頷いた。
オレは頷き返した。
「『さぁ、終わらせよう!!!』」




