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身体認識

 身に覚えはないだろうか。

自分は陸上選手のようにかっこよく走っていると思っていても、カメラで撮られたものを見ると恥ずかしくて見ていられないダサいフォームをしていたという経験は。



 人間は自分の体を思い通りに動かすことが出来ない。

ただ腕を上げるという動作も目を閉じると、自分の考えているのと実際にしている動きとでは誤差がでてくる。

動きが複雑になっていくとその誤差はより大きなものになる。

天才というのは、自分の動きが思い通りにいってなくても、結果的に優れた動きになっている人間のことだと思う。

才がないものは、指導者によって矯正していき、自分の理想形を体に染み込ませるのだ。



 オレには才能もないし、優れた指導者にも巡り会えなかった。

別にスポーツは好きではなかったが、ダサい動きをして笑われるのは嫌だった。

始めにしようとしたのはランニングフォームの改善だ。

だけど、家にはカメラもなかったので、やりようがなかった。

だったらせめて自分がしてる動きを正しく認識しようと思った。

そうすれば、おのずと改善できると考えたのだ。



 毎日していた歩数制御もこれを身につけるためだ。

今では信号がなければ、目を瞑っても学校に問題なく行けるレベルに達していた。

オレの頭の中には細部にまで自分の体が再現できている。

体が動くと、頭の中の自分も連動し、同じ動きをする。

オレが他人に誇れる特技だ。



 オレは頭の中の自分の体の隣に白の姿を思い浮かべる。

痛みと恐怖という感情が付随しているので、鮮明に思い浮かべることが出来た。

頭の中の白は様々な動きを動きを見せている。

オレが今日、観察した白の動きだ。

今まで受けに徹してきたのはこれを憶えるためだった。

武術の心得がないオレは、白からそれを学ぶことにしたのだ。

伝承は模倣から始まる、今からオレはそれを実践する。

頭の中のオレが白の真似をして、それを実際の肉体にフィードバックする。



 こんなことやったことはない。

肉体を動かすと、頭の中の自分は動くが、その逆は試したことはなかった。

三日間、練習を重ねたので少しはできるようになったが、完成度は低い。

あんな狭いところでは練習するにも限度があったのだ。

正直に言えば、もっと練習したかったが体力の余裕を残したかった。

どんなに完成度が低くても三日間という限度を決めていたのだ。



 オレの人生で積み重ねてきた努力が今試されていると思うと少し興奮する。

白よ、受けてみろ、オレの修練の成果を!

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