二つの影
3話目
森の中を二つの影が高速で移動している。
一つは人の形をしており、自らの足で木々の間を駆け抜けていく
その後ろに四足歩行の動物が付いてきている。
その動物は狼だった。
しかしその大きさは異常だ。
地球に住む狼の数倍は大きい。
全身が銀色の毛に包まれており、その上に人影がある。
狼は進路上を立ちふさがる木々をなぎ倒し、岩は砕きながら進んでいる。
それでも、その速度はまったく落ちず、むしろ加速していく。
だが、それよりも恐ろしいのは避けながら進んでいる方の影の方が速いことだ。
二つの影は徐々に差が開いていく。
「オール、少しペースを落としなさい、私たちがついていけない!」
「そんなこと言っている場合か、わしらの村じゃぞ、好きにはさせん!」
「私たちは偵察に行くだけよ、間違っても戦っちゃだめよ」
二つの影の内、騎乗している方がもう一人、オールと呼ばれているものを諌めようとした。
だが、オールはそれに耳を貸さずさらに加速していく。
村があった場所は白い半球に覆われていた。
二人は茫然とそれを見つめていた。
狼は離されないように追走したためへたり込んでいる。
「これはなんじゃ、奴らはこんな能力を持っていたのか?」
「おそらく現れたのは白でしょう、白は敵を逃がさないために結界を張るという記録があるわ」
「敵じゃと!?、ならばわしらの村で誰かが奴と戦っているのか!」
「たぶんね。さぁ、目的を達したわ、戻りましょう」
影の内の一人が村から背を向けた。
もう一人は返事をしないが気にせず、狼を労わっている。
「オール、行くわよ?」
回復した狼に騎乗し、再びに声を掛ける。
撤退の準備していたため、気付いていないみたいだ。
オールが出す不穏な気配に。
気付いたときには、もう行動を起こしていた。
オールが手を天に掲げている。
目を閉じ、集中しているようだ。
「オールやめなさい!」
その言葉は遅かったみたいだ。
「ジュウシンソウ!」
その腕は振り下ろされた。
凄まじい衝突音が辺りに響いた。
だが、その攻撃を受けても結界はまったく揺らがなかった。
その攻撃は反動があったみたいだ。
オールは地面に倒れこんだ。
服が血で赤く染められている。
服が吸いきれなかった血が地面を濡らす。
「しっかりしなさい!」
どこからか透明な瓶を取り出し、なにか液体を飲ませている。
心中はわからないが、飲まされているオールの表情は悔しげだった。
どうやら血が止まったみたいだ。
しかし、ダメージは大きかったようで、立ち上がれないみたいだ。
オールは座り込んで忌々しそうに結界を睨み付けていた。




