開幕
3話目
開幕のベルを鳴らしたのは白だった。
奴は構えを取る。
その構えはこいつが最初に見せた構えだ。
あの一撃をまた打とうしている。
そうはさせない!
オレはそれに対し、ダッシュで近づく。
こいつから距離をとって戦うのは危険だ。
至近距離でも危険な技を持っているかもしれないが、あれよりはマシだろう。
打たれる前に近づくことが出来た。
やはり、この至近距離からは打つことできないみたいだ。
白は構えを変えようとしている。
その隙を見逃すわけがない。
ダッシュの勢いを利用して体当たりを浴びせる。
吹き飛ばすことは出来きず、少し後退した程度だ。
わずかに開いた距離を再び詰める。
絶対に離れてたまるか!
最初の一撃はオレが与えることができた。
少し体が軽くなった気がする。
自分では気づかなかったが、思いのほか緊張していたみたいだ。
その緊張も攻撃を与えたことによって減った。
これならうまく戦えるだろう。
「イリス、予定通り作戦その一でいくぞ!」
『うん、任せて!』
オレは両腕の力を抜き、体の前でブランブランとさせた。
いわゆるノーガードスタイルのようなものだ。
正直、不安だが勝つためにはこれしかない。
白の構えは体を半身にした状態で、左腕で脇腹を隠している。
右腕は肘を胸につけ、拳は顔の前に置いている。
オレはそれを一つ一つ観察していく。
『右!』
オレはその指示通り腰から上を右に曲げる。
さっきまでオレの肩があった位置を右拳が通過する。
その風切り音は拳圧だけで離れた位置にあった干し草を吹き飛ばしたものとは違い、幾段かおとなしいものだった。
それでも、大きな石が通過する迫力はあったが。
『次、正面!』
上体を大きく後ろに反らす、いわゆるスウェーバックで回避した。
反らしすぎたために、白の姿は見えなくなった。
普通なら致命的な隙になってしまう。
しかし、オレにはイリスがいる。
イリスとオレは知覚を共有しているが、それだけではなくイリスは自分の目で外を見ることが出来る。
たとえオレが見ていなくても、イリスが見ている。
二人掛かりで構築されている警戒網はそう簡単には破られない。
『中段、右!』
上体を戻しながら足を動かし体を横に向ける。
「痛っ!」
不安定な体勢で動いたため、完全に回避できなかった。
あばら骨の下辺りを少し掠ってしまった。
掠っただけでもすごい威力だ。
直撃したら悶絶していただろう、いや一気に戦闘不能になっていた。
『イツキ、大丈夫!?』
「気にするな、今は集中しろ!」
上体を戻し終わり、再び白を視界に捉えた。
戦いはまだ始まったばかりだ。




