打ち勝てないもの
オレ達は村の一番大きな家の裏に回った。
玄関ドアの方には白がいるからだ。
裏にある突き出し窓から家の中に入ろうとした。
しかし、突き出し窓は人間一人を入れるほど大きく開けることはできなかった。
迷わずにオレは窓を蹴り壊し、中に侵入した。
入った先はリビングだ、オレは一目散に台所に向かった。
台所の中に入り、ドアを閉めた瞬間、ガチャリとドアが開く音がした。
台所のドアではない。
白は意外と礼儀正しく玄関からドアを開けて入ってきたみたいだ。
足音と共に圧倒的存在感が近づいてくる。
「(急げ急げ急げ急げ急げ急げ急げ急げ!)」
台所のドアが開き、白が入ってきたときにはすでにオレ達は姿を消していた。
オレ達は、食料庫に身を潜めていた。
どうやら奴はここに気付かなかったみたいだ。
頭上から感じる圧倒的存在感と恐怖は消えない。
おそらく、家の中を探し回っているのだろう。
しばらくして、奴の存在感が少し遠ざかる。
白は家からは出たが、村からは出ていない。
それがわかるほど奴の存在感は凄まじいものだった。
ひとまず命拾いしたみたいだ。
オレ達は食料庫の隅に座り込んだ。
地面にお尻が付いた瞬間、全身が激しく震えだす。
ここまで来るのに、全ての気力を出し尽くしてしまった。
昨夜は震えを止めることが出来なかったが、一応止めようと思うことができた。
だが、今回はそう思うことすらできなかった。
昨夜似たような経験をしたおかげなのか、頭までは完全に恐怖に染まることはなく、ほんのわずかにだが、冷静に考えられる自分がいる。
それは今メリットではなく、デメリットとしてオレに襲い掛かっている。
奴の存在はオレの本能に死を覚悟させ、理性に死を受け入れさせたのだ。
肉体に及ぼしている影響は昨夜より深刻だ。
息も荒く、心臓の音も爆音みたいに体に響いている。
体中から汗が滝のように流れ出す。
文字通り、オレはもう心身ともにボロボロだった。
オレは腕の中にいるイリスを強く抱きしめる。
あの夜みたいにぬくもりを求めてしまう。
…………冷たい
気のせいなのかもしれないが、イリスの体温は低くなっている。
さらに、激しく体を震わせていた。
自身がこんな状況でもイリスはオレを諦めずにオレを助けてくれた。
早々に諦めて、死を受け入れてしまった自分が情けなかった。
オレ達はなにもできなかったし、なにもやれなかった。
ただただ嵐が収まるのを待つしかオレ達にはできなかった。
戦闘回になるので土日に5話投稿します




