無人
たぶん、この家にも誰もいないだろうから、ノックなしに家の中に侵入する。
広いな、ほかの家は一部屋か二部屋程度だったが、ここは五部屋以上あるようだ。
玄関続きの部屋にドアが四つある。
全てのドアを開け、部屋を軽く見回っていく。
書庫、寝室、倉庫、台所、そしてこのリビングの五つだった。
やはり人はいないみたいだ。
とりあえず、書庫に向かう。
図書館にあるような本棚が二つ置いており、両方ともびっしりと本が詰まっている。
その中から適当に一冊抜き出した。
ペラペラと軽く流し読みする。
それを何冊か繰り返した。
「なるほどな」
「読めるの?」
足元でおとなしくしているイリスが聞いてきた。
「まったく読めないな」
予想通りだ。
そう都合よく日本語が使われているわけがないだろう。
少しだけ期待していたのも事実だが。
次に寝室に入る。
ここにはベッドが二つ置いてあるだけだ。
ほかに気になるものはなかった。
一応、布団をめくったり、ベッドの下も調べたが何もなかった。
部屋を出るとき、イリスが名残惜しそうにベッドを見ていた。
オレもあそこに飛び込みたいが辛抱だ。
続いて倉庫を調べることにした。
そこには土木用具が置かれており、倉庫の壁には鉈が立てかけられている。
おそらく、川までの道を切り拓いているものと同じものだろう。
土木用具は日本でもあるようなシャベルや金槌があった。
ただ食べ物は見当たらない。
食料庫は別にあるのかもしれない。
次に台所らしき部屋に入った。
食器棚と流し台がある。
そして、コンロらしきものもあり、上には深手の鍋は乗っている。
他の家にもあったが、使い方が分からない。
よく見れば、ボタンらしきものがあった。
どうしようか……
押したら、爆発とかしないよな。
「ポチッとな。」
オレが悩んでいる間に、イリスがコンロに近づきボタンを押した。
「いきなり押すなよ!」
オレは慌てて、イリスを抱き上げ、コンロから離れた。
……………どうやら爆発はしないみたいだ。
「イリス、頼むから軽率なことはやめてくれ」
「ごめんごめん」
そんなやり取りをしているといい匂いがした。
コンロの上の鍋からだ。
蓋を開け、中を覗き込んだ。
そこにはスープが大体鍋の四分の一まで入っており、軽く沸騰している。
あれは点火のスイッチだったみたいだ。
しかし、コンロからは火が出ていない。
IHみたいなものかな。
グーとお腹が鳴った。
イリスも喉を鳴らしている。
………我慢できない。




