混ぜたら危険
☆
「ふーーーーー」
疲れからか思わず長いため息が出てしまった。
これはどちらかと言えば肉体的疲れより精神的な疲れだ。
貴族と冒険者ギルドが今回の犯罪者移送に抗議してきたのだ。
長々とした抗議文が私の執務室に届けられた。
ギルドの方は別に無視してもいいんだけど、貴族はそうもいかない。
一応処理しなくてはならない。
仕事だけど、面倒くさいな。
仕事を始めようした時、執務室の扉が荒々しく開かれた。
目をやると寸胴体型を中年男性が部屋に入ってきた。
おかしいな。彼はいつもはこの時間なら寝ているはずなんだけど。
「レンス!」
「今日は早いんですね。アルマ班長」
「眠いのに叩き起こされたんだよ!それとそれは氏族の特性だ。仕方ないだろ」
彼はアルマ班長。五人の班長の一人だ。
「それどころじゃねーんだよ。アレックスが俺の可愛いユーちゃんを誘拐しやがったんだ!」
「誘拐って。ユーちゃんって輸送車ですよね。使用届もちゃんと出させましたし、問題ありません。それにあなたの個人所有物ではありませんよ?」
「この機会だから言いますけど、あなたは備品の私物化がひどいですよ」
「ぐっ!」
「もういいですか、私は仕事が忙しいんです」
まったくアルマ班長には困ったものだ。
整備の腕はいいですし、多くの部下から慕われているんですけど、これがあるからな。
「それだけじゃねーんだよ。あいつ魔物寄せを三種持ち出しやがった」
「別にいいんじゃないんですか。あとで報告書出して、補填すればOKですよね?私も店が閉まっている時使っていますよ」
「そこじゃねーよ。三種持ち出したのが問題なんだよ」
魔物寄せ、三種。
不吉な単語の組み合わせだ。
トラブルの臭いがする。
「大丈夫ですよ。いくらアレックスでも……」
「アレックスだぞ」
その言葉で今までアレックスが起こした騒動が走馬燈のようによぎった。大丈夫だ。いくら彼女でもそんなことしない。それに中和剤もあるはずだ。
「大丈夫ですよ。それに中和剤もありますし」
「中和剤の在庫を調べたけど減ってねーぞ」
大丈夫だ。部下を信用しよう。
アレックスがいくらガサツでアホでもそんなことはしないはずだ。
……大丈夫だよね?
☆
魔物寄せの致命的な欠点。それは混ぜると危険なことだ。
これは二つまでなら大丈夫なんだが、三つ以上混ざることにより発生する。
その現象とは魔物寄せの効果が著しく増加してしまうことだ。
しかも、引き寄せられた魔物は興奮状態になるので収拾がつかなくなる。
だけど、大丈夫だ。
もし誤って混ざった場合でも、中和剤もあるので落ち着いて対処すれば問題ない。
通常、魔物寄せと中和剤はセットで販売しているのでアレックスも持ってきているはずだ。
「アレックス!中和剤は!?」
「なんだそれ!?」
「用意しとけよ!」
オレの叫びを皮切りに周囲の魔物たちが襲い掛かってきた。




