混ぜるな危険
跳びかかってくる犬の魔物、マッドドックを躱し、頸椎に肘を叩き込む。
『イツキ!後ろ!』
隙を突こうと跳びかかってきた違うマッドドックを回し蹴りで撃墜。
『右!ゴブリン!』
ゴブリンが振り下ろしてきた棍棒を半身になり躱し、がら空きの腹部に貫手を刺す。
そのままゴブリンの体内を抉り魔石を抜き出した。
魔石を失ったゴブリンは倒れる。大多数の魔物は魔石を抜かれたら死ぬのだ。
「キリがないな」
抜き取った魔石を地面に落とし、愚痴る。
オレの周りには多種多様の魔物の死体と魔石が溢れていた。
だが、周囲にはまだまだ魔物がおり油断できない。
アレックスの方を見ると大剣を振り回し魔物たちを薙ぎ払っていた。
その内の一体、猪の魔物がオレ目掛けて飛んできた。
オレは回避できたが、射線上にいたゴブリンは跳ね飛ばされ、虫の息だ。
「危ないだろ!」
「すまん!」
なぜこれほどの魔物の群れに襲われることになっているかというと、全てはアレックスのせいである。
☆
オレたちは街道を外れた先の草原をさらに進んだ森に来ていた。
ちなみにここは村がある暴熊の森ではない。
あそこは狩りには全く向いていないからだ。
なぜなら名前通り熊が多く生息するので遭遇する危険が高いのだ。
熊は高く売れること売れるんだけど、強い。
狩りの対象としてはリスクが高すぎる。
アレックスによるとこの森には狼や猪、ゴブリンなどの魔物が住むらしい。
そこまで強くはないのでどれも狩りの対象としては最適な魔物だ。
森の入口には魔物をいないので奥の方に進んでいく。
勿論、輸送車は林の入口に置いてきた。
アレックスの力だと森の腐葉土も問題はなく進めると思うが、木が邪魔で動かせない。
見張りも偽装もしてないが、何も積んでいないし、そもそも誰にも動かせないので大丈夫だ。
オレも動かせないか一度試してみたらピクリとも動かなかった。
「ここにしようぜ」
先導していたアレックスが立ち止まるとカバンの中から液体の入った小瓶を三つ取り出した。
今回の狩りあの液体、魔物寄せを使う狩りだ。
魔物寄せはその名の通り魔物を引き寄せる薬でこれを使えば魔物を探したり、追い立てる必要もなくなるので楽に狩りができる。
勿論欠点もある。
あくまで引き寄せるだけなので数は制御できない。
使う場所を誤るととんでもない数が来ることもあるし、一匹も来ない場合もある。
警戒心が強い魔物などには効かない場合もある。
また、一つの薬で全ての種を引き寄せることはできない。
当たり前だが、肉食獣や草食獣では食べる物が違う。
よって好みの匂いも異なる。
それは魔物も同じなので、使い分ける必要がある。
もう一つ致命的な欠点があるけど、これは心配する必要はないだろう。
「どれにする?俺はこれを使った狩りは始めてなんだ」
「どうしようか?」
アレックスが持ってきた魔物寄せは獣系、人型、不定形の三種を引き寄せるものだ。
肉を得るのなら獣系が最適だ。
適切に解体すれば毛皮も取れる。
人型のゴブリンも悪くない。
ゴブリン自体は売れる部分は少なく、魔石ぐらいしか価値がない。
角も売れるけど、研磨剤などに使われるぐらいだ。
ただゴブリンが持つ武器、これが高く売れる。
ゴブリンの武器は木でできた棍棒なんだけど、これを炭にした物は通常の木を炭にした物より燃焼時間も長く、火力も高い。鍛冶などに使われており、常に買い手がある優良商品なのだ。
不定形、すなわちスライムは除外した方がいい。
これで稼ぎを得るのは特殊技術が必要だ。
考えを巡らせていると液体が地面に叩き付けられる音がした。
音の方を見るとアレックスが魔物寄せを三本とも地面に撒いていた。
「何をやってる!」
「どうせならいっぱい呼んだ方がいいだろ」
「魔物寄せは同時に使用するな!そんなことすれば……」
言い切るよりも森の異常の方に注意が向いてしまった。
『森の気配が変わったよ』
イリスに言われるまでもなく、オレも気づいてた。
魔物の荒い息遣いが聞こえてくる。
もう囲まれてるな。




