奔る衝撃
多くの魔物が来ているがスライムは来ていない。
正確に言うと来てはいるのだが、他の魔物に踏みつぶされて死んでいた。
哀れな。
だが、オレたちにとってはありがたい。
スライムはスライムコアと呼ばれる物を抜くか破壊しなければ死なないが、スライムコアは透明で見抜くは難しい。
通常は魔法、もしくは幅広なハンマーなどの武器でコアを壊すのが一般である。
オレは魔石を抜く時と同じようにスライムコアを抜けるがアレックスじゃ倒すのに時間が掛かるだろう。
ちなみにスライムコアは魔石に特殊な膜がコーティングされたもので、この膜はとても高価だ。
貫手を使いまた魔石を抜き出した。
『残り200回ぐらいだよ。節約してね』
オレの貫手に皮膚を突き破るほどの貫通力はまだない。
じゃあなぜ出来るのかというとイリスのおかげだ。
当たる瞬間、指先に【破壊】を纏っているのだ。
これならイリスの消耗もオレへのバックファイアも最小限で済む。
難点は呼吸を合わせないとできないし、烈豪などの一部の技ではこれを使えないことだ。
今は雑魚しかいないが、長引くとやばい。
大物が現れたら危険だ。
どうにかしなければ。
「イリス。あれはいけるか?」
『もしかしてあれ?大丈夫だけど、時間が掛かるし消耗も激しいよ』
「現状を打破するにはあれしかないだろ。頼む」
『分かったけど、撃てる状況じゃないよ』
確かにそうだ。ひっきりなしに魔物が来るので余裕がない。
守ってもらう手もあるがアレックスの戦闘スタイルは護衛には向かない。
この数相手では心もとない。
囮を作るか。
ちょうどよくゴブリンが来たので片手で首を締める。
本当はチョークスリーパーが楽なんだけど隙だらけになるので使えない。
ここから一気に折るのも頑張れば可能だけど、そうはせず気道を塞ぎ窒息させ気絶させた。
それを魔物寄せが撒かれた場所に置く。
魔物寄せはまだ完全に地面に吸い込まれておらず泥になっており、それがゴブリンの体に纏わりついた。
「アレックス!これを遠くに投げてくれ!」
「あいよ!」
これで魔物の一部はゴブリンの方に行くはずだ。
大元はこっちなので大半はこっちに来ると思うけど。
死体ではなく生餌にしたのは同士討ちを狙うためだったんだけど、その気遣いも無駄に終わった。
アレックスの馬鹿力で投げられたゴブリンは空高く投げ飛ばされたからだ。
あんな勢いで墜落したら死んでいるかもしれない。
同じように四方八方に囮を撒いたおかげで魔物が少し減った。
この数ならアレックスに任せても大丈夫だろう。
「魔物寄せをどうにかするから少しの間頼む!」
アレックスの了承を背で受け、魔物寄せが撒かれた中心部に向かう。
地面に右手を突き、大きく息を吐いた。
『それじゃあ準備するよ。待っててね』
全身の力を抜き、イリスの準備が終わるのを待つ。
『いけるよ』
「行くぞ!」
獣転掌・壊!
イリスの力が宿った獣転掌。
それは地面に染みついた魔物寄せを容易く【破壊】できる。
衝撃は伝播していくので撃ち漏らしもない。
こうして魔物寄せは効果を失うのだった




