自己紹介
どれぐらい時間がたっただろうか。
やっと幼竜が泣き止んでくれた。
服が濡れてしまったので脱ぎ、外に干しておく。
上半身がインナーシャツ一枚になってしまった。
再び、木の中に戻り、幼竜を抱きしめた。
これで寒くないな。
すっかり目が覚めてしまった。
じきに眠くなるだろう。
それにしてもウロコがスベスベしてて気持ちいい。
高性能な抱き枕だな。
犬枕もいいが、竜枕もいい。
まあ、リキほどではないがな。
リキは枕レベル10だとしたら、こいつは6ぐらいだな。
「じーーーー」
視線を感じる、というか自分で言ってるなこれは。
「じーーーーーーー」
少しおもしろい、口元が緩む。
「じーーーーーーーーーー!」
徐々に声が大きくなってきた。
もう少し放置しておくのもいいが、可哀そうだし相手をするか。
「どうしたんだ?」
オレがそう問いかけると幼竜は嬉しそうに話す。
「目が覚めちゃったから少し話がしたいなぁって」
それも悪くはないか、オレもまだ眠れそうにないしな。
「いいぞ、なにを話そうか」
幼竜は少し悩む素振りを見せた。
「君のことが聞きたいなぁ」
「オレのことか、大して面白くないぞ」
「それでもいいよ、聞きたいんだ」
困ったな、何から話せばいいだろうか。
そういえば、自己紹介すらしてないな。
そこから始めるか。
「オレの名前は橘イツキだ。今年で十七歳になる、高校二年生だ」
「じゃあ、これからイツキって呼んでいい?」
「かまわないよ、好きに呼んでくれ」
「ありがとう、イツキ」
少し照れくさいな。
家族以外で下の名前で呼ばれるのは久しぶりだ。
たぶん、小学生以来だ。
あれは誰だったか、もはや思い出せない。
おそらく、同級生の誰かだろうな。
思考が横道に逸れたな、元に戻そう。
幼竜も続きを聞きたそうにしているし。
「趣味と言えるほど、熱中しているものはないけど、テレビとか漫画を見るのが好きかな」
そういえば、あの漫画の続きはしばらく読めそうにない。
ドラマも最終話が見れなさそうだ。
オレはリアルタイムで見たいんだけどな。
「特技は体を動かすことぐらいかな」
あくまで動かすことなんだけど、今はいいだろう。
これぐらいかな、オレのことは。
家族構成とかは別にいらないだろう。
お見合いじゃあるまいし。
「終わり?」
「ああ。大体こんな感じだな」
幼竜はまだ聞きたそうにしている。
なんか小学校や中学校のときのクラス替えの後の自己紹介を思い出した。
特に言うことがなくて困ったのを憶えてる。
ほかになんかないかな。




