懺悔
もうすぐ、夢の世界に旅立てる。
そんな矢先だった。
「ごめんね」
幼竜が、突然謝ってきたのだ。
「何かしたのか?」
まさかおねしょでもしたのか。
服を確認してみる。
濡れていない、違うみたいだ。
だったら何だろう?
「僕らが君をこの世界に引きずり込んでしまったんだ。そのせいで、君に苦しみを与えてしまった。今にしてみれば、君が登りきるまで待てばよかった。それぐらいの猶予は多分あったと思う。僕たちのせいだ。」
そう言い、幼竜はオレの視線を避けるかのようにオレの胸に顔を埋めた。
責められるのを恐れて、オレの顔を見れないのだろう。
それにしても、やっぱり寒いから震えてるわけではないのに気づいていたみたいだ。
そりゃあそうだよな、あんだけ泣いていたんだし。
さて、どうしたものか。
対応を考える、結論は決まっているが、どう伝えればいいんだろうか。
コミュニケーション能力に自信はない、もっと学校で磨いておくべきだったか。
しばらく、悩んで切り出した。
「ああ、ムカつくな」
幼竜はオレの腕の中でビクッと震えた。
「オレ達をこの世界に落とした奴らがな」
「何が目的かは知らないが、許せない」
オレだけじゃない、あの時学校にいた全ての人間。
そして、その家族を苦しめる奴らは到底許せなかった。
幼竜は相変わらず、顔を上げない。
不安なのだろう、オレの返答が。
「だけど、お前たちのことは恨んでないよ」
「えっ!」
幼竜は顔を上げた。
信じられないという顔をしていた。
「たしかに引きずり込んだのはお前たちだが、それはやむ得ない理由だろ」
「オレが登りきるのを待っていたら、世界が滅んでいたかもしれない」
「あの世界には大切な人たちがいる、お前たちはその人たちを守ってくれたんだ」
伯母さんや母さんと父さん、大事な人たちがいっぱいいる。
その人たちを、間接的とはいえ殺さずに済んだのだ。
少しだけ思うところはあるが、恨むのは筋違いにもほどがある。
むしろ、感謝するべきだろう。
「ありがとう、君のおかげでオレは大事な人を失わずに済んだ」
オレはそう言うと、幼竜をやさしく抱き寄せた。
言葉だけでは伝わらないと思った、だから行動で示すことにした。
かつて、オレもそうされたように。
「ありがとう、ありがとう……」
幼竜はすすり泣きながら、そう繰り返した。
服が湿っていくのを感じる。
オレの涙でも濡れていたからビチョビチョだな。
まあいいか、これぐらいならすぐに乾くだろうし。
とりあえず、こいつが泣き止むのを待つことにしよう。




