川遊びにはご用心
片足をかばいながら、川へと向かう。
今度は幼竜は肩に乗ってこなかった。
おそらく、オレの足を心配してくれているんだろう。
横でフワフワと浮きながらついてきた。
「こっちの方角で合っているのか?」
「間違いないよ、水の音が聞こえる」
オレにはまったく聞こえない、どういう聴覚をしているのだろうか。
再び、川に出ることができた。
いの一番に幼竜は川に近づき、水を飲んでいた。
さっきもかなり飲んでいたが、大丈夫なのだろうか。
オレものどを潤す。
そして、右足の靴を脱ぎ、川に突っ込んだ。
この痛みに効果があるか分からないが、とりあえず冷やしてみることにしたのだ。
冷たいな。
痛みが引く感じはしないが、水の流れが気持ちいい。
心なしか楽になった気がした。
さっきから汗が服にべたついて気持ち悪いな。
誰も見てないし、いいか。
オレは、服を脱ぎ、全裸になった。
そして水の中に身を沈めた。
汗が流れ落ちていくのを感じる。
川の中には魚が泳いでいた。
昔、釣り番組で見たイワナによく似ている。
さっきの熊といい、この魚といい、生態系は地球に酷似している。
だが、断言はできない。
もしかしたら、RPGに出てくるような怪物がわんさか存在しているかもしれない。
竜とか巨人とかが相手なら死は免れないだろう。
鬱になってきた、やめよう。
目を閉じ、水の流れに身を任せる。
緩やかな水流だ。
……気持ちいいな。
バシャバシャ
水の叩く音が聞こえた。
目を開け、音の発生源を見ると、幼竜が水の中で、もがいている。
「苦しぃ、息が、助けて!」
たぶん、オレを真似して飛び込んだんだろう。
溺れていた。
慌てて近づき、抱き上げる。
「なにやってんだよ」
「君が、あまりにも気持ちよさそうだったから」
いじけたような目線を送ってくる。
しょうがないなぁ。
水面に幼竜を降ろした。
沈まないように支えてやる。
幼竜はさっきみたいにバシャバシャともがいている。
「力を抜け」
だが、さきほど溺れそうになった恐怖から力を抜こうとしない。
「大丈夫だ、溺れてもオレが助ける」
少し水から引き上げ、幼竜に言い聞かせた。
「オレがついてるから」
幼竜は小さく頷いた。
もう一度、水面に降ろす。
今度は落ち着いているようだ、力が抜けている。
少しずつ、体を離していくと溺れずに、水に浮かぶことができたようだ。
それから、バタ足を教えてやった。
さっきから楽しそうに泳いでいる。
オレも足の痛みを忘れてしまっていた。
少し、昔のことを思い出した。
オレも同じように溺れそうになって、同じように泳ぎ方を教わったんだ。
こんなことをしてる場合じゃないというのはわかっている。
ずっと張りつめていた精神は癒しを求めてしまったのだった。




