風は吹き続ける
『終わったな。』
「はい」
『各々言いたいことがあるみたいだ。聞いてやれ。』
ひとりひとり前に出てきて、私に声を掛けてくる。
親密度に差はあるけれど、みんな大事な仲間です。
慰めや叱咤激励、いろんな言葉を掛けてくれ、その一言一言に涙があふれてくる。
ナナカが私の前に来る。
彼女と今はこの村を離れている同期、そして先輩でチームを組んで、任務をこなしていた。
『リッちゃん』
「何?。ナナカ。」
『老けたね。』
思わず、頭を殴ろうとしたが拳がすり抜けてしまった。
その現実に悲しくなる。
『懐かしいね。私がいつも余計なことを言って、リッちゃんに叩かれてたよね。』
『リッちゃんは老けても美人さんだね。大人の色気があるよ。』
この子は死んでも変わらないみたい。あの戦乱でもこの軽口に怒り、そして、励まされてきた。
また聞けるなんて思ってもいなかった。
『私からの最後の頼みだ、よく聞け。』
副長の頼みか、どんな無茶を言われるのかちょっと怖いな。
『任務を無視して村から逃げた馬鹿を全員叩きのめせ。』
なんだそんなことか。
姉さんの死で村にいた銀の風は私ともう一人を除いて村から去った。ずっと一緒にいたということは、やっぱり知っていたみたい。ご愁傷さまね、副長は全室員から恐れられていた人だから、懲罰を与えても誰も文句は言わないでしょう。
『リチア、これはあくまでお願いだ。やらなくてもいいぞ。』
「やりますよ。私も思うところがありますし。」
実はまあまあムカついていたのだけど、これで大義名分できた。いろいろと処理が済んだら、お仕置きをしに行こう。
イツキ君の所にいた姉さんが私たちのところまで来た。
伝えたいこと、謝りたいこと、いっぱいあったけれど、言葉が出ない。
『リチア、今まで苦労をかけたわね』
「姉さん・・・。」
そして、姉さんは私を抱きしめた。
体温は感じないし、触れられている感覚もない。でも、私は確かな温もりを感じた。
姉さんは何も言わずに、私の話を聞いてくれた。
ずっと見てきた姉さんは知っていると思うけど、それでも何も言わずに。
至福の時間はあっという間に終わる。
『そろそろ時間みたいね。』
姉さんたちの体が徐々に薄くなっていく。
涙をこらえて、無理やり笑顔を作った。
『忘れないで、私たちはすぐそばであなたを見守っているから。』
そう言い残し、みんなの姿が消える。もうその姿は見えない。
でも、私には分かる。みんなが傍にいてくれていることを。
銀の風は終わってなんてなかったんだ。




