懐かしき
プラータ視点
『起きろ!馬鹿弟子!』
その声に跳び起きようとしたけど、力が入らず失敗した。
そこにいたのは懐かしき男装の麗人でした。
「副長!」
副長は姉さんと一緒に私を鍛えてくれた師匠の一人。
でも、そんなはずがない、副長はあの戦いで死んだはず、ということはここがあの世なのかしら。
『まだリッちゃんは死んでないよ』
別人の声がし、そちらに振り向いた。
「ナナカ……」
私と同期で、副長と同じく戦乱に消えた私の親友のナナカがいる。
見回せば、あの戦いで死んでいった私の仲間たちがいた。
涙で視界が滲む。思わず手を伸ばしたが、触れることが出来ない。
『私たちはもう死んでいるのよ、分かっているでしょう』
認めたくはないけれど、それは変えようのない事実。涙を止めることが出来ない。
『相変わらず泣き虫だな、お前は』
「先輩・・・…」
『さっさと涙を拭け』
もし生きていたらハンカチを貸してくれたはずよ。
先輩は口は荒いが、実は誰よりも優しいことを知っている。本人は決して認めないけれど。
「なんでみんながここに?」
『私たちはずっとあなたの傍にいたわよ。あなたが気付かなかっただけ。あなたみたいな泣き虫を置いてあの世なんて行けるわけないじゃないの』
それはとても申し訳ないことをしてしまった。私が安らかな眠りを邪魔したのなら、罪悪感を感じる。
「ごめんなさい」
『私たちは自分の意思でここに残っているんだから気にするな』
『なぜ、私たちがあなたに話しかけられるようになったのかは分からない。でも、そんなことはどうでもいい』
『お前の弟子が闘ってるんだ、ちゃんと見届けなさい。』
副長の視線の先にはイツキ君とオールがいた。
「姉さん……」
そしてその傍には姉さんがいる。
イツキ君の体勢はまさに獣転掌の姿勢。だけど、ただの獣転掌じゃない。あれは私たちの獣転掌、銀の風用に改良した獣転拳の技。
それが鮮やかに決まる。完璧だわ、まるで姉さんが使ったみたい。たぶん、イツキ君に姉さんが力を貸してくれたんでしょうね。
撃たれた直後オールが反撃の膝蹴りを放とうとしていたが、その途中で崩れ落ちた。
私たちの獣転掌はオールの獣転掌破りも通用しない。獣転掌を頭部に受けたら、脳が激しく揺らされ、オールでも意識を保つことさえは難しい。
崩れ落ちながらも体勢を立て直そうとしているが、それは叶わず、地面に倒れた。もう彼は動くことはできないはずよ。
今日この日をもって、狂気の獣と化した史上最強の獣人は敗れた。それは私たちの悲願が成就した日でした。




