狂気は終わりに
終わらせよう。この闘いだけではなく、オールさんの狂気の歴史も。
一歩一歩近づいていく。イリスもシルバーも手を出さず、オレたちを見守っている。
ここから先は、オレがやらなければいけないんだ。
オールさんはまだ片足は動く。
だが、射程に入っても、攻撃をしてこなかった。
もう戦う気がないのかな。
そうならば楽だったんだけど、どうやら違うようだ。
その闘気はまったく衰えてはいない。
だけど、攻撃してこないなら好都合だ。
そして、オレはあの技を放つためにオールさんの顔に手を添えた。
獣転掌・・・この技ならオールさんの防御を無効化して、倒すことが出来るはずだ。
「獣転掌か……儂には効かんぞ。儂が作った技じゃ、破る方法も知っている」
ハッタリだろうか。本当だとしてもオレにはこの道しかない。
「それにたった一ヶ月程度じゃ身に付けることなんぞできんぞ」
たしかにオレはまだ獣転掌を習得できていない。実戦はおろか練習でもまともに撃てた試しがない。それでも、オレが知っている技でオールさんを殺さずに倒せるのはこれだけなのだ。
「ここまで儂を追い詰めたんじゃ。褒美として一回だけチャンスをやろう。ほれ、撃ってみろ」
オールさんの余裕がオレに失敗のイメージを頭によぎらせる。これを振り払わないと成功なんて夢のまた夢だ。
失敗じゃない、成功をイメージしろ。
だが、どれだけ時間を掛けても失敗のイメージはどうしても消えない。
ここまできてオレはなにを恐れているんだ。駄目で元々だ、失敗してもイリスたちがいるんだ。
もうやるしかない!
『それじゃあ、駄目よ』
その時、どこからか女性の声が聞こえた。
とても暖かく、その声を聞くと不安が消えていき、不安で覆い隠されていた自信が蘇っていく。
オールさんの様子からオレにしか聞こえてないみたいだ。
『大丈夫、何も不安になることはないから。あの子があなたに授けたその技は彼に通用するわ』
『でも、今のあなたじゃ完全には発動できないみたいね』
『私が導くから、安心して』
その言葉と共に、オレの中に新たな回路が産み出された。
違うか、眠っていた、使っていなかった物が目覚めただけだ。
『行きましょう。あなたなら絶対に出来るわ』
誰かはわからないけど、その言葉を信じよう。
「これで終わりだ!!」
獣転掌・瞬!!!




