衝突の行方
オレの両拳が獣振爪を放つ腕を挟み込み、その動きを止めた。
しかし、完全には受け止めることが出来なかった。
獣振爪の本体は受け止められたが、その余波までは受け止めきれず、衝撃が体に突き刺さる。
もしコートがなかったら、致命傷を負っていたかもしれない。
もういない白に感謝しなくては。
これで獣振爪は死んだ。
銀狼の咢はオールさんの腕を粉々に砕いたのだ。
もう撃つことができないだろう。
それ以上にオールさんの獣振爪への信頼はこれで砕いたはずだ。
やるなら今しかない。
構えを白極から獣転拳に切り替えた。
最初から決めていたのだ、決着をつけるのはこの技でなくてはいけない。
オールさんの防御を突き破り、なおかつ殺さずに戦闘不能に出来るのはこれだけだ。
「そんな負け犬の技を使い、勝利を捨てる気か?」
「負け犬の技なんかじゃありませんよ。負けたのは獣転拳は関係ない。あなたの心が原因じゃないんですか」
ここまで獣転拳を馬鹿にするということは負けた理由を獣転拳に押し付けているんだろう。だが、それは違う。見ていなくても、白と戦ったオレには分かった。
獣転拳は白極と並べることができるほどの技だ。それを否定するほどの出来事が彼に襲い掛かった。それがオールさんの狂気の源泉。それはおそらく・・・。
「あなたの狂気の源は紅じゃない。あなたが狂った理由は裏切りだ。自らが最も大事に思っていたもの。国に不必要という烙印を押された。そのことがあなたを精神をヒビを入れたんでしょう」
「お主に……」
小さく何かを呟いたようだが、気にせず続ける。
「だが、それでもあなたは守ろうとした、裏切られてもなお。そんなあなたがされた仕打ちは紅と戦わせることだった。それがあなたの精神を粉々に砕いたでしょう」
「お主に何が……」
「そんな状態で勝てるほど紅は弱くはない。あなたはおそらく瞬殺されたんじゃないんですか」
「敗北したあなたは縋ったんでしょう。その絶対的力に。それがあなたの獣振爪への執着の起源じゃないんですか?」
心を砕かれたときに出会った、絶対的存在。それは今まで培ってきたものを捨ててしまうほどだったのかもしれない。
「お主に何が分かる……」
「分かりませんよ。所詮、師弟であっても他人。人の気持ちなんて察することしかできません。それは親でも姉弟でも変わらない。これもただの推測にすぎません。何かに縋るということは確かに楽なんだと思います。」
「だけど、今のあなたは見てられません。余計なお世話かもしれませんが、止めて見せます」
口には出さないが、紅も今のオールさんに慕われてもいい迷惑だと思うしな。




