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向けられた爪

 オレたちが喜んでいると、場を満たしている殺気がさらに膨れ上がった。

オレからだと横顔しか見えないが、そこからでも相当な屈辱と怒りを感じられた。

挑発の意味も込めてそれぞれ最大限に喜びを表現したんだが、少しやりすぎたのかもしれない。

 武道やスポーツの世界ではあからさまに喜びを表現するのはアウトらしい。

ガッツポーズ一つで反則を取られることもある。相手を侮辱する行為と見なされるのだ。

オールさんの顔を見ているとたしかににその通りみたいだった。



 これで試したいことはもうない。

後はこの闘いを終わらせることだけだ。

こちらが追い詰めているように見えるが、戦況は互角だ。



 精神的余裕はあるのだが、肉体的余裕はあまりない。

無傷なのは後衛でサポートしてくれているイリスぐらいだ。

 オレもシルバーも悟られないように表に出していないだけで、蓄積されている肉体のダメージは大きい。

オールさんと比べれば軽微だろうが、元々のスペックが違いすぎる。

分かっていたが、オレたちは相当無茶をしているな。


 

 少しシルバー休ませるか。

最も標的になることが多いので、一番消耗しているシルバーを休ませることにする。

オレは背後からオールさんに襲い掛かった。

シルバーも飛び掛かろうとするが、目で制した。



 まずは注意を引きつけるためのパンチを撃つ。

だが、それは外れてしまった。躱されたのだ。

その事実に笑みを抑えきれない。

 先ほどの一撃は、オールさんの肉体だけではなく、精神にもダメージを与えたみたいだ。

自身の防御力への信頼が揺らいでいる。

そのためダメージはないと頭では分かっていても、思わず体が動いてしまったのだろう。


 

 オールさんの行動に回避が多く混じり出す。

おのずと攻撃の頻度が落ち、今までより格段に楽になった。

オールさんは回避に慣れていないのだろうか、どことなく動きがぎこちない。

 そんなぎこちない動きは大きな隙になっており、そこに傷口狙いの攻撃を合わせる。

彼はそれを嫌がり、大振りの爪撃で周囲の空間ごと薙ぎ払うがもうそこにはオレはいない。

あれだけ大振りだとサポートがなくても回避もしやすい。バックステップを踏み、躱すとともに距離を取った。



 オレが距離を取るとオールさんがジュウシンソウの体勢に入った。

あの大振りはこのため布石だったようだ。

 問題なのは向けられた先にいる人だ。

オレでもイリスでもシルバーでもない。

その先にいるのはプラータさんとエチアの木だった。

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