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狂気はさらに牙を剥く

 この一撃のためにイリスは闘いに参加させずに、外野に置いていたのだ。

本当に綱渡りな作戦だった。

一番のネックだったのはイリスの自制心だ。

 実はイリスはオレたちの中で一番血の気が荒いのだ。

我慢できずに、闘いに参加することになったら、どうしようかとハラハラしていた。

よく我慢してくれた、後で一杯ご褒美を上げなくては。

終わったら兎狩りだな。大量に狩ってプラータさんに美味しいものを作ってもらおう。



 その【破壊】の爪撃はオールさんの体の一部を抉り取った。

傷口は大きく、完全には止血出来ていないみたいで、血が少しずつ流れている。

さっき足に攻撃した時に気付いたのだが、あの止血法は単純に筋肉に力を入れて、傷口を閉めているのだと思う。

オレではそんな筋肉の操作は出来ないし、筋肉の量が絶望的に足りていないので不可能な技だ。



 流れ出ている血を見ると多少やりすぎたかと思ったが、この世界で不殺をするなら、指一本動かすことが出来ないぐらいボロボロにするか、気絶させるしかないのだ。

死んでさえいなければ、チートな薬や魔道具など治療が出来る。

まだ立っているし、闘気は衰えていないのでたぶん問題ない。



 これだけの一撃をしたイリスをもう無視してくれないな。

もう隠さずに、積極的に参加させよう。

 ここまでダメージが積み重なっている状態なら、筋力も万全には発揮できないだろうから黒銀の操弦の拘束ももう少し長く持つと思う。

これでオレとシルバーの負担も減らすことができる。



 攻撃を再開する前にコートを拾いに行かなくてはならない。

それはオールさんから数メートルの位置に落ちていた。

回収に動く前に地面に落ちているコートがひとりでに動き、オレに向かって飛んでくる。

よく見るとイリスの弦が付いており、イリスが拾ってくれたのが分かった。



「ありがとう」

「早く着てよ、まだ終わっていないんだから」

オレはコートを宙に投げ、両袖に一気に腕を通す。

この方法なら一瞬で着れる、今シルバーがオールさんを引きつけているのだ、オレたちも参加しよう。



 オレは前方に駆け出し、イリスは後方に下がった。

前衛はオレとシルバーで、後衛はイリスだ。

 イリスが戦闘に参加した今、布陣は完璧になった。

オレとイリスの連携は最高だし、オレとシルバーはこの一ヶ月、何度も遊びと称した模擬戦を繰り返したので、互いの動きを熟知している。

唯一の不安はシルバーとイリスの連携だが、そこはオレが間を取り持てばいいだけだ。


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