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VSオール4

 オールさんは軽く言い返されただけで、切れているようだ。

感情の制御が出来ていないな。

たしかに強い感情は強力な力を与えてくれる。

実際に洞窟の虎との戦いでイリスを傷つけられたオレは怒りによって、虎を殺せる力を得ることができた。

だが、それはとてつもなく危険なことだ。



 感情を制御出来ずに呑まれると、どうしても動きが雑になるし、周りが見えなくなる。

それは致命的な隙になることがあるのだ。

あの時は虎がそれを狙えるほど強くなかったし、すぐに闘いを終わらせたから、大きな問題にならなかった。

それでもボロボロになったけどな。



 オールさんの注意が怒りによって完全にオレに向いている。

仕掛けるなら今だ!

オレはオールさんに見えないようにプラータさん直伝のハンドサインを送った。

伝わったかどうか確認するまでもないし、確認するために視線を向けたら台無しになる。

近接戦闘をするために接近する。



 オレの接近に合わせて、彼は爪を振るう。

横一文字を描くそれはジュウシンソウではなかったが、直撃すればオレの体を真っ二つにしてもおかしくないほどの威力を持っているに違いない。



「舐めるな!!」

来るのが分かっていたら、こんなの簡単に躱せる。

オレは上体を前に屈める、いわゆるダッキングをして躱した。

 ギリギリを狙った躱したので髪に爪が少し掠る。

屈んでオレの顔は下がったのを狙って、オールさんは膝蹴りを繰り出してきた。

オレの顔に彼の膝が迫ってきていたが、それは命中することはないだろう。



 オレに集中し過ぎですよ、オールさん。

オレの背後からシルバーが彼に襲い掛かった。

完全に虚を突かれたその襲撃に対応できず、シルバーに噛みつかれる。

オールさんの口から苦悶の声が漏れた。

ちょうど、牙がプラータさんが切りつけた腕の傷に食い込んでいる。

さすがのオールさんでも傷を責められたらダメージがあるみたいだ。


 

 これはいい収穫だ。

オレでもジュウシンソウに合わせて攻撃せずともダメージを与えることができる可能性が生まれた。

相手の傷を狙うのは卑怯かもしれないが、格上だ、それぐらいしないと勝てない。

それにこれは命を懸けた真剣勝負なのだ。これも戦略の内である。プラータさんも許してくれるだろうし、むしろよくやったと褒めてくれるかもしれない。あの人はそんな人だから。



 それにしても見事に嵌ってくれたな。

オレに意識を集中させ、そこを狙いシルバーが襲撃する。

ばれない為に声を張り上げ、シルバーの接近に生じる音を誤魔化したり、工夫したが成功してよかった。

怒りの感情が注意力を散漫にさせ、奇襲に気付かなかったのだろう。


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