その根底にあるもの
殺気というものはやっぱり健康に良くない。
覚悟は決まっていたが、それでも体に負担が来る。
まだ時間がありそうだったので、プラータさんを安全な場所に移動させようと思ったが、すぐに思い直す。
今、この一帯に安全な場所なんてない。
ならば、ここにいるのが最善かもしれない。
これからの闘いで守らなければならないのは、オレたち自身の命とプラータさんの命、そしてエチアの木だ。
一か所にまとまってくれていた方が守りやすい。
腕の中にいるプラータさんをエチアの木の前に寝かせた。
なかなか来ないな。
シルバーはどんだけ遠くにぶっ飛ばしたんだろうか。
おかげで作戦を考える時間が長く取れる。
オールさんはプラータさんとの戦闘で大きなダメージを負っている。
特に左手と右足のダメージは深刻でまともに動かすことが出来なくなっていた。
しかし、それでもオレたち三人よりも格上だ。
勝つためには策がいる。
先ほどの戦闘からジュウシンソウや人質への攻撃の対策を考えなければならない。
大筋の作戦が決まったところでやっとオールさんが森から出てきた。
「今なら謝ったら許してやる。プラータを引き渡すのじゃ」
戯言だ、そんなことできるわけがない。
「渡すわけないでしょう」
「ならば、儂と戦うのか?。お主程度の実力じゃ儂は殺せんぞ」
「殺す気なんてありませんよ」
「なんじゃと?」
「オレ達はあなたを止めます。絶対に殺しません」
オレはプラータさんだけではない、オールさんにもお世話になったのだ。そんな人を殺すなんてしたくなかった。
「愚か者め!!!」
「そんな甘えた考えで儂の前に立つとはいい度胸じゃ」
「甘えてなんていませんよ。オレは覚悟を決めたんです」
ずっと考えていた。あの日プラータさんに言われた殺す覚悟と生かす覚悟。殺すか生かすかその境界線は一体何か。わからなかった。
だが、オールさんと戦うことになり、答えは出た。自分の心に従えばいいだけの事だったのだ。オレはオールさんに死んで欲しくない。
だったら、殺すわけにはいかないよな。
生かしても殺しても悲劇を生む可能性があるのなら、後悔しないように自分の心に従うしかないのだから。
あとは覚悟をするだけだが、その想いが、心がオレの背中を押してくれる。
大丈夫だ、オレはもう中途半端な覚悟で、攻撃を躊躇しない。
そもそも、活人と殺人の根底にはある共通の意識がなければならないのだ。
それは何かの命を守ろうとする意思だ。
活人は目の前の命を守りたいという意思、殺人はその先の命を守る意思が根底になければならない。
それが欠けていたのだ、オレには。
気付けたのはオールさんとプラータさんのおかげだ。
修業の合間に語る様々な話がオレを答えに導いてくれたのだ。
この闘いは二人への恩返し、だからオレはオールさんを殺さない。
「ならば、プラータ共々あの世で後悔するがいい!!!」
怒号が響き、オレたちの闘いが始まった。




