十字架
オレはプラータさんに駆け寄ろうとした。
だが、シルバーがオレの目の前に立ちふさがる。
「どいてくれ、シルバー!。」
「オレはプラータさんを死なせたくない!。それはお前も一緒だろう!?。」
「ここで見捨てて生き残っても、オレは一生後悔する!。」
「オレにそんな十字架を背負わせないでくれ!。」
シルバーは向きを変えて、オールさんを睨んでいる。
オレの願いに応えてくれたのだろう。
今にも飛び掛かりそうだ。
「シルバー、無策で飛び込むな。」
シルバーがオレを止めてくれたおかげで、冷静になることが出来た。
冷えた頭で作戦を練る。
作戦を二人に伝えてオレは全力で駆けだした。
修業の成果でオレの速力は一ヶ月前とは比べ物にならないものになっている。
すぐにプラータさんの元に到達し、今にも崩れ落ちそうな彼女の体を抱き留めた。
オレの出現によりオールさんの歩みが止まった。
「退け!イツキよ!。」
そんな声が聞こえたが、そんなもの無視だ。
オレが退かないので、オールさんはオレごと攻撃しようと爪を振り上げた。
「ならば、二人仲良く死ね!!!。」
プラータさんが口を動かしているが、声になっていない。
「逃げて」と言いたいのだろうが、そんな命令聞けない。
今にも振り下ろされそうだった爪は、突如動きを止める。
「そうはさせないよ!。」
イリスの黒銀の操弦だ。
虎はこれで拘束されたが、オールさんの動きを止めるにはそれでは不十分だ。
オールさんの力ならすぐに引きちぎることが出来るだろう。
だが、オレたちにはそのわずかな時間が欲しかったのだ。
オールさん目掛け、十分な助走をつけたシルバーの本気の突進が繰り出される。
かなりの速度が出ているが、所詮は直線的な動き、傷だらけのオールさんでも容易くかわせるレベルのものだったが、拘束されていたため直撃した。
その質量と速度から生まれたエネルギーは森の奥までオールさんの体をふっ飛ばした。
この突進はダメージを与えることよりも、ぶッ飛ばすことを目的にするように指示しているので、おそらくダメージは薄いだろう。
だが、これで猶予が出来た。
プラータさんの治療が出来る。
オレは傷薬を二本と体力回復薬一本を常に持たせてもらっている。
傷薬一本を飲ませるが回復量はそれでは足りず、二本目を飲ませた。
ついでだ、体力回復薬も飲ませる。
これで手持ちの薬は無くなってしまったが、死ぬことはなくなったはずだ。
これからやることを考えれば、薬を使い果たしたのは少し痛いが、プラータさんの命には替えれない。
森の奥から強烈な殺気がオレたちに向けられる。
覚悟はもう出来ていた。




