鮮血
プラータさんの攻撃に急所を狙うことが加わった。
オールさんもガードしているが、対応しきれていない。
苦し紛れのジュウシンソウもプラータさんに容易く躱され、オレたちに向かって放たれる攻撃もシルバーが潰すか、自力で回避できている。
ナイフがオールさんの右足に突き刺さった。
これではもしオールさんが瞬転駆を使おうとしても使えないだろう。
最もここまで追い詰められて使わなかった獣転拳の技を使うとは思えないのだが。
オールさんの体からおびただしい量の血が流れている。
攻撃を受けるたびに血を流し、止血しているが、総量がすごい。
このままではオールさんは死んでしまうだろう。
だが、オレには二人の闘いを止めることは出来ない。
正確には出来なかった。
二人の闘いを止める言葉も行動も思いつかなかったからだ。
プラータさんにはそれほどの決意が、オールさんには狂気が感じられた。
二人の師の殺し合いに目を背けたくなる。
だが、それは許されていないと思う。
オレは二人の弟子として結末を見届けなくてはならない。
オールさんはもはや満身創痍だが、その闘気はまったく陰りを見せていない。
こんな状態でも諦めていないようだ。
彼は知っているのだろう、勝負は終わるまでわからないことを。
特に戦闘は一瞬で戦況が変化することを、オレは数日前に身をもって経験している。
逆転もあるかもしれない。
プラータさんもそれを分かっているのだろう。
オレが未熟だから分からないのかもしれないが、まったく隙がない。
おそらく、もうすぐ決着がつく。
いくらオールさんの体が頑丈でも流れ出ていった血の量からもう長くは戦えない。
その時を見逃さないようにオレは瞬きもせずに、決着を待った。
この時、オレもプラータさんも見逃していた。
人が命を懸けてでも守ろうとするのは他者の命だけではないことに。
それに気づいたのはオールさんの魔爪があるものに向けられたときだった。
「駄目!それを傷つけちゃ!。」
プラータさんの悲鳴のような声が響かせたが、その爪は無情にも振り下ろされた。
その先にあるのは一つの木だ。
その木はプラータさんにとって特別な木、エチアの木。
それを守るためにプラータさんは自らその斬撃の射線に入り、斬撃に対して両手を使い、ナイフを振るった。
ジュウシンソウの斬撃とナイフがぶつかる。
プラータさんは両手を使っているが、焼け石に水みたいだった。
数秒の均衡の後にナイフは切断され、プラータさんに斬撃が迫る。
そして鮮血が舞った。




