毒薬
オールさんは動かない自分の腕を見ている。
何を考えているのかわからないが、その表情は直視したくない。
見ていると寒気がしてくるからだ。
狂っている・・・プラータさんはそう言ってたが事実だとよくわかった。
「動かん。儂の腕に何をした?。」
「神経と腱を断ちました。」
「嘘を言うな。その程度だったら、すでに動くようになっとるわ。ティーグルの回復力を舐めるんじゃない。」
ティーグル族はそんな固有能力を持ってるのか。
もし戦うことがあったら気を付けないと。
「それはあなただけですよ。普通のティーグルも回復力は高いですが、斬られた神経がすぐ回復ほどじゃありませんよ。」
オールさんが特別だったみたいだ。
頭に刻んだ知識を訂正しないと。
プラータさんは懐から一つの瓶を取り出した。
その色はおぞましい。オレのボキャブラリーでは表現できない。
あえて言うなら、ヘドロか。
「ナイフにこれを塗り込みました。」
「なんじゃそれは?。」
「これにはあなたの回復力を阻害する毒が含まれています。」
「儂に毒は効かんぞ。」
「ええ。だから苦労しました。」
「ロストには回復薬も効きにくいですが、毒も効きにくい。ナイフに付けられる毒薬の量では到底効きません。」
「ロストにも有効な薬はなかなか出来ませんでしたが、イツキ君たちのおかげで完成しました。」
オレたちのおかげ?。
この一ヶ月の思い返すが、まったく覚えがない。
「彼らはあなた以上のロスト、全てを持っていません。」
「彼らに効くということはあなたにも効くということです。」
「もちろん、彼らに飲ませていたのは薬ですが、毒と薬は紙一重。」
「彼らに効く薬を作るのはあなたに効く毒を作るのに参考になったんです。」
オレは修業用に持たされている薬の容器を取り出した。
始めは大きな瓶だったが今では試験管のような小さな細長い容器になっている。
そんな苦労を掛けてたなんて知らなかった。
「回復力を失ったあなたの腕は丸一日は動かせないはずです。」
「小癪な真似を。」
「これは銀の風の戦い方です。あなたもご存じでしょう?。」
返答をせず、オールさんは黙った。
苦虫を噛み潰したような顔をしている。
卑怯者と言いたいのだろうか。
だが、その毒を作るのも実力の内だとオレは思う。
万が一の対策をしていなかったオールさんが悪いだろう。




