エチアの木の決闘
思い起こそうとする前にエチアの木の前に着いた。
木の前にオールさんがおり、シルバーが少し離れたところでオールさんを見張っている。
「シルバー!」
プラータさんが呼ぶ声に反応してシルバーはオレ達の前に来た。
「二人をよろしくね」
シルバーはそれに軽く吠えて答えた。
プラータさんはオールさんの方へ歩いていく。
「プラータさん頑張って!」
イリスの応援に振り向かずに手を振って応えた。
その背はオレに言いようのない不安を抱かせ、何も言うことが出来なかった。
二人の距離が縮まるに連れて、その闘気が高まっていく。
すぐに闘いが始まってもおかしくないほどだ。
「あなたが紅に敗れてから、獣帝国が無くなってから、そしてあなたがエチア姉さんを殺してからどれだけ時間が経ったんでしょうか?」
「儂にはすべて昨日のことのようじゃよ」
「オール、終わらせましょう」
「愚かじゃ。お主に儂は倒せん。お主より強かったエチアも儂に敗れたのを忘れたか」
「私はこの日のために鍛えてきました。今ならあなたにも勝てます」
その言葉を最後に二つの闘気がぶつかった。
その衝突にオレは気圧されそうになる。
オールさんの闘気は狂気を秘めており、寒気を感じる。
一方プラータさんの闘気は決意のようなものを感じさせた。
どちらも強大で、下手したら可視化できるかもしれないほどだ。
闘うのはオレじゃないが緊張で手汗が止まらず、何度も拭う。
プラータさんは腰に下げているナイフを抜く。
いつもオレが見ていたナイフとは違う、戦闘に適したナイフだ。
切れ味を追及したものではなく、強度を優先したのか幅が厚い。
刀身が日の光を反射し、鈍い光を放っている。
プラータさんはそのナイフを逆手に持ち、体をオールさんから向かって真横にした。
オールさんは無手だ。
その構えは獣転拳のものとは違う。
獣転拳を捨てたというのは本当みたいだ。
体を正面に向け、拳を握らずに爪を立てている。
どんな技を使うんだ?。
プラータさんの話によれば紅の技を再現したものだから斬撃の格闘術だろう。
素手であらゆるものを切断するとはにわかに信じがたい。
だが白の知っているオレからすればあり得ると思ってしまう。
彼らはそれほどの技を持っているのだ。
闘気が最大限まで高まり、二人の闘いは始まった。




