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牢獄

 プラータさんは再び歩き出した。

「オールは自ら敵地に攻め入って、敵をその技で虐殺していったわ」

「当時、その姿に敵は恐怖し、仲間は鼓舞されていたわ」

敵に回したら恐ろしいが、味方だったら物凄く頼もしかったに違いない。



「それから私たちは多くの犠牲を払い獣帝国を解体して、三つに分けることに成功したの」

「なんで三つに分けたんですか?。」

 そこまでする必要があるとは思えない。国を分けるのは国力の低下に繋がる危険があるのに。

「そもそも獣帝国は初代獣帝のカリスマで統治されていたの。初代獣帝はバラバラだった獣人をまとめ上げ、国を作った。その威光は死んでからも続いていて、王族はそのおかげで獣帝国をバラバラにせずに統治することができたの。獣帝を降ろすということはそのカリスマ性に頼ることができなくなる。だから、比較的仲がいい氏族で纏まれる三つにしたの」

 


「話を戻すわよ。戦いが終わった後もなおオールは戦を求めたわ。」

「やっと安定した国を再び動乱に導こうとさえしたの」

 平時の英雄は平和の邪魔になったのか。

違うか。オールさんは排除されようとする前は立派な人物だったのだ。

それを変えてしまったのは紅なのかそれとも、それを利用した者たちか。



「私たちはオールを閉じ込めることにしたわ」

「でもオールを閉じ込めて置けるだけ牢獄なんてなかった。だから、私たちは力技ではなく搦め手でオールを封ずることにしたの。」

「それがあの村よ」



「建物の配置や気候、オールの故郷を再現し、彼の心を捕える牢獄を作り上げたわ」

「それから、姉さんとオールが愛し合うようになり結婚して、子供が生まれたり、いろいろあったわ」

「長い間村で生活する中でオールの狂気も段々と消えていったの」

 オールさんの狂気はエチアさんたちに癒されたのだろうか。



「でも完全には消すことが出来なかった。そのために姉さんはあることを計画したわ」

「狂気の源である紅の秘技を打ち破り、勝つことによってオールの紅への執着を消そうとしたわ」

「結果は失敗。エチア姉さんは殺されたわ」

 死因を聞いていなかったが、まさかオールさんが殺していたなんて。

愛するものを自らの手に掛けるとは。オレには全く理解できない。



「姉さんが死んだ後、再び彼は狂気に捕らわれてしまったの」

「私はもう諦めていたの。オールはこのまま狂気の獣として死んでいくしかないと」

「でも、あなたたちが現れた」

「オレ達がなにかしましたか?」

 この一ヶ月のことを思い起こしたが、特に思い当たる節がない。



「白を倒したことなのか、それともロストだからか、オールはあなたたちになにかを感じているのよ」

「捨てたはずの獣転拳を教えるなんて、今まであり得なかったわ」

 白を倒したことはわかるが、ロストであることになにがあるんだ?

「オールもロストよ、スキルのね」

 そういうことか。よく考えれば二人ともロストに詳しかった。

自分がそうだから詳しかっただな。



「これから私はオールと戦うわ」

「今ならオールの狂気を終わらせることができるかもしれないから」

「勝てるの?」

 イリスは不安そうだ。

オレも不安だ、そんな人に勝てるのか?。

「勝算はあるから安心して」

 プラータさんは笑みを浮かべ、イリスの頭を撫でた。

その表情をオレはどこかで見たことがあった。


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