史上最強
獣転拳の創始者、史上最強の獣人とはオールさんのことだったのか。
「オールは当時獣帝国の国防を担っていたわ」
「常に敵国との国境に滞在して睨みを利かしていたの」
「そのおかげで敵国は侵略することができなかったわ」
「なぜですか?」
「強すぎるからよ。彼一人で一個大隊を全滅させることができたの」
一騎当千、物語だけの存在だと思っていたが異世界とはいえ実際に存在するとは。
オールさんはいわゆる抑止力だったんだろうな。
「だから人間たちはオールを排除したかった」
「和平の条件の軍事力の放棄にはオールのことも含まれていたわ」
「私たちは逃げることができたけどオールは国境から離れることをしなかったの」
「何度か姉さんたちが説得に行ったんだけど頑なだったわ」
責任感が強い高潔な軍人だったんだな。
今のオールさんに抱いているオレのイメージとは少し違った。
思い付きで行動する鬼畜ジジイがオレのイメージだ。
「そんなオールを排除するために奴らはあることをしたわ」
「・・・紅」
オレは小さくつぶやいた。
わずかに知っているオールさんの過去。
それから推測した答えだった。
「そうよ。奴らは紅を使ったの、無数の兵を使っておびき寄せてね」
「結果はあなたも知っているでしょう」
「たしか負けたんですよね?」
「ええ。私たちはその策略に気付いて駆け付けた時にはオールは紅に敗れて瀕死だったわ」
「手を尽くして一命は取りとめたけど、傷は深く目を覚まさなかったの」
最悪の状況だ。半分詰んでいるようなものだ。
「そんな状態なって私たちは決心をしました。帝国を終わらせることを」
「今になって思えば遅すぎた決断だったんだけどね」
プラータさんは自嘲気味に言った。
なにか言おうと思ったが下手な慰めなんてするもんじゃない思い、オレは口をつぐんだ。
「まずは各氏族の長に根回しをして、獣帝国を解体する準備」
「その間、人間たちの動きを止めるためにいろんな工作をしたりしたね」
「多くの仲間が死んだわ・・・・」
「でもオールが目を覚ませば、状況は好転する。私たちはそう信じて行動したの」
「そしてオールは目覚めた、だけどそれは以前の高潔な軍人だったオールとは違っていたのよ」
「獣転拳を捨てて、紅の技を再現しようと執心するようになってしまったの」
「それの何が問題だったの?」
イリスが聞くが、オレも問題ないように思えた。
学ぶ格闘技を変えるのはよくあることだろう。
「私たちもそれだけなら問題にしなかったわ」
「でも、オールは技を完成させるために人間や敵に回った獣人を技の実験台に使ったの」
「責任感が強く、多くの人に慕われていたオールは狂気の獣になっていたのよ」




