怒り
オレの体に横からなにかがぶつかり、弾き飛ばされた。
イリスだ、オレは弾き飛ばしたイリスはオレがいた場所にいる。
そこは虎の爪が当たる場所。
駄目だ!
宙に投げ出されながらもオレは必死に手を伸ばす。
しかし、届かなかった。
オレの身代わりになったイリスは虎の爪の餌食になる。
虎の腕力イリスの小さな体を跳ね飛ばされた。
壁に激突し、イリスは力なく倒れる。
オレは急いでイリスに駆け寄った。
幸い、虎が自由になったのは腕だけで拘束を完全に抜け出していない。
イリスの容体を確認する。
鱗が守ってくれたのか目立った傷はない。
頭を打ったのか気絶してるだけだ。
オレはイリスは広間の隅に移動するために片手で抱えた。
その間に完全に拘束から抜け出した虎がオレの背後から迫ってくる。
目で確認しなくともこの程度対応するなんて容易い。
振り向かずに飛び掛かってきた虎を裏拳で叩き落とす。
「邪魔をするな……殺すぞ」
地に伏している虎を睨み付ける。
その視線を受けた虎は体をビクッと震わせた。
オレはコートを地面に敷き、その上にイリスを寝かせる。
少し待ってくれ、すぐにけりをつけてくる。
イリスの頭を軽く撫で、オレは立ち上がった。
虎の方を見ると、硬直している。
「来ないのか、ならこちらから行くぞ!」
突撃するオレに対して、虎は振り下ろす斬撃ではなく、突きを繰り出してきた。
いつもなら後ろに下がることで避けるのだが、今はそんなことはしない。
掻い潜りながら前進する。
避けることよりも前進することに集中しているため、避けきれずオレの頬が爪で少し抉れた。
こんなもの怪我の内にも入らない。
虎の懐に潜り込んだオレはダッシュの勢いを利用し、鳩尾にパンチを入れた。
虎は悶絶し、体がくの字に曲がる。
がら空きになった顎にアッパーをお見舞いし、さらに肘打ちを胸部に打ち込む。
怒りに身を任せて滅多打ちにする。
時折、反撃してくるがそんなの気にしない。
怒りの半分はイリスを傷つけたこいつへの怒りだ。
もう半分は自分への怒り、自分の不甲斐無さが嫌になる。
滅多打ちにされた虎は前のめりに倒れようとする。
もうオレは迷わない!
殺す!
銀狼の咢!
上半身の力を込めた打ち下ろしの右拳と下半身の力を込めたアッパーのような左拳。
その二つに挟まれた虎の頭蓋骨は粉砕され、中の脳味噌までもぐちゃぐちゃになる。
オレの拳は虎の血によって真っ赤に染まった。
オレは寝かしているイリスを血が付かないようにコートごと抱き上げる。
「ごめんな、オレのせいだ」
早くイリスを休ませよう。




