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霊園の帰り道。
正美は鈴木と並んで歩いていた。
傍から見れば、一人でぶつぶつ喋っている少し不思議な女子高生である。
しばらく歩いていると、正美はふと鈴木の方を見た。
「……鈴木さん。」
「なに?」
「なんか禍々しくない?」
「え?」
「進化した?」
鈴木は自分の手を見る。
「ああ。」
「見た目も変わったね。」
正美はじろじろ観察する。
「黒いオーラ纏ってるし。」
「目も赤くなってる。」
少し頷いて、
「厨二病だ。」
「厨二病。」
真顔で結論を出した。
「ひどい。」
鈴木は苦笑する。
「私も厨二病だから、かっこいいとは思うけども。」
「褒めてるの、それ。」
「うん。」
「闇属性ってロマンじゃん。」
「その発想なのね。」
鈴木は肩をすくめた。
「たぶん。」
少し考える。
「何人も殺してきて。」
「うん。」
「私が怪異として有名になったからじゃない?」
「え。」
正美は立ち止まる。
「マジ?」
「学校だけじゃなくて?」
「ええ。」
「調べてみなさいよ。」
「なんのためにやってるのよ、SNS。」
正美はスマホを取り出す。
「えー。」
「好きなゲームの公式情報とか。」
画面を操作する。
「攻略情報とか……。」
鈴木がじっと見る。
「それTwitterよね。」
「うん。」
「インスタは?」
「数件だけ投稿して。」
「うん。」
「すぐやめた。」
「なんで。」
「何が楽しいのかよく分かんない。」
鈴木は思わず空を仰いだ。
「私たち。」
「うん?」
「華のJKよね?」
「そーだよ。」
「私の方がマシじゃない。」
「そう?」
正美は首を傾げる。
「私イジメはなかったけどね。」
「それを言われると弱いわ。」
鈴木は苦笑するしかない。
正美は検索欄に鈴木の名前を入力した。
数秒後。
「あ。」
「出た?」
「でたでた。」
スクロールする。
「わー。」
「酷い。」
ニュースサイト。
動画。
まとめサイト。
考察ブログ。
匿名掲示板。
どこも鈴木の話題で持ちきりだった。
『○○高校いじめ事件』
『被害者・鈴木○○さん』
『怪異による連続不審死か』
『関係者が次々死亡』
「鈴木さんと被害者の情報がズラズラ。」
「イジメの内容も載ってる。」
鈴木も画面を覗き込む。
「……割と合ってるわね。」
「えぇ。」
正美は顔をしかめる。
「個人情報……。」
住所こそ伏せられているものの、
家族構成。
部活歴。
成績。
趣味。
小学校。
中学校。
写真。
「あー。」
「すごい。」
「死者に人権はないわ。」
鈴木はどこか諦めたように笑う。
「Oh……。」
正美はなんとも言えない顔になる。
「それは悲しい。」
さらにスクロール。
「掲示板とかにも載ってるんかな。」
検索。
数秒後。
「あ。」
「ある〜。」
匿名掲示板には、
『次に死ぬのは誰?』
『○○高校まとめ』
『いじめ加害者一覧』
など、不穏なスレッドが並んでいた。
「生きてるみんなも名前載ってんね。」
「ええ。」
「写真まである。」
「あるねぇ。」
正美は少し引き気味だ。
「ネット怖。」
「本当に。」
「一回広まると消えないし。」
「うん。」
正美は何気なくスクロールを続ける。
「あれ。」
「ん?」
「私もいる。」
「当然じゃない?」
「でも。」
画面を見せる。
【斎藤正美】 ・同級生 ・現在も生存 ・いじめへの関与は確認されず ・詳細不明
「……。」
「……。」
二人で画面を見る。
「クラスのみんなと比べて。」
正美は首を傾げた。
「私、情報薄くない?」
「名前と顔写真以外、不明なんだけど。」
鈴木は吹き出した。
「ふふっ。」
「本当だ。」
「趣味も。」
「交友関係も。」
「部活も。」
「全部『不明』。」
「ほら。」
正美は少し得意そうだ。
「情報統制。」
「違うわ。」
鈴木は笑いながら首を振る。
「単純に。」
「誰もあなたのこと知らないのよ。」
「……。」
「……。」
正美は少し考え込んで、
「なるほど。」
と真面目に頷いた。
「ぼっちのステルス性能、高いな。」
「そこ感心するところじゃないでしょう。」
「でも悪用されたら困るから、これはこれで。」
「悪用って何する気なの。」
「特にない。」
「ないの。」
「うん。」
「ただ。」
正美はスマホをしまいながら笑う。
「ネットで『詳細不明』って書かれると、なんかラスボスみたいでちょっと嬉しい。」
「結局あなたも厨二病じゃない。」
「だから最初に言ったじゃん。」
「私も厨二病だって。」
鈴木は呆れながらも笑う。
その笑い声は、少し前よりもずっと自然で、生きていた頃の彼女に近いものになっていた。




