LIVE配信
遺体の捜索作業は、午前九時から行われた。千早の提案した、別の立坑から横穴を通して浄化槽の下へアプローチする方法は、地元の土建屋が「危険な素人アイディア」と難色を示した。
「はい、どーもー!高木っちの時効探偵チャンネル。久しぶりの配信は、先日予告したLIVE配信。あの、笠木市女子高生失踪事件の捜索現場から!どう、これヤバくない?高木っち、プレス扱いで放送局以外じゃ独占配信よ」
高木は島田の回すカメラの前で“報道”の腕章を見せると、奥の作業員たちを指し示した。
「みんな気付いた?失礼ながら作業員の人達、おじいちゃんばっかりだよね」
重機の周囲には高木の言う通り、還暦をゆうに越えた老人達が集まって待機していた。
「今回は巨大な浄化槽の下に眠る女子高生の発見が目的の作業なんだけど......しいちゃん、浄化槽の資料映像出せる?」
高木の指示に合わせて島田が写真と、施工図を配信画面にインサートすると「デカイでしょ、潜水艦だよねこれ」と高木が指を差して言った。
「五メートル以上下に埋まっているらしいんだ、被害者の今井加奈さんは。それで、この浄化槽から少し離れたところに穴を掘って、いい感じの深さまで行ったら今度は横に掘ってご遺体を回収するって算段」高木はそう言うと、音尾の元に向かった。
「この掘り方、地元の土木屋さんには難しいと言われたそうですね」
「あ、はい。穴を補強しながら掘削したり、噴き出す地下水の排水も同時にしなくてはいけないので難しいようです」
カメラを向けられた緊張で、まるで小学生の発表のような言い方になった音尾に高木は肩を震わせて「ありがとうございました」と言って離れた。
「そんな難工事に挑むのが、このおじいちゃんたちなんですけど、共通点があるんですよね?」
高木は高齢者の一人にマイクを向けて、話を聞いた。
「ワシらはこの笠木市で、閉山まで炭鉱夫をやってたんだ。それで、あの重機のオペに指示してる斎藤さん。あん人が測量技師なんだけど、今回の話を聞いて、これは炭鉱夫の出番だって声掛けて回ったんだ」
「半世紀前まで笠木市の産業を牽引したのが炭鉱でしたね。良質な石炭を年間九十万トン掘ったと聞いています。皆さん、大ベテランなんですね」
そこで作業員たちが重機周辺に集められた。高木が「頑張ってください!」と声を掛けて一旦締めると、島田が女子高生失踪事件と資産家女性強盗殺人事件についての過去動画を流した。
『高木くん、ヤバいって。同接一万人超えたよ』
インカムから届いた報告に「マジか」と目を丸くした。
『投げ銭も赤帯ばっかりだよ』
「なんか震えるわ」
島田の報告は、つい数ヶ月前の自分とはまるで別世界の話のように思えた。




