罪と罰
「湯島さん、手伝っていただきたいことがあります」三鷹は千早の言葉をそのまま伝えた。
「木全と話をして欲しいのです」
『木全くんとですか。一体何を話せば......』
「それは——」三鷹は千早の言葉に目を見開いて、喉に詰まった言葉を吐き出すように伝えた。
『分かりました。そう伝えます』
湯島の礼を合図に、桜田が同じ画角に入った。
「本日はありがとうございました」
三鷹が起立して腰を折り曲げた。
桜田も画面の向こうで同様の敬礼をした。
『三鷹さん、お疲れ様でした。名探偵にもよろしく伝えてください』と言うと口の端を上げて、目を細めた。
三鷹は気まずそうに指で目尻の下を掻くと「了解しました」と、苦笑いのまま切断した。
「バレてたじゃないですか」恨めしそうに振り向いた三鷹に「質問が千早ワールドだったからな」と高木が笑った。
「ところで——」
高木の顔から笑顔が消えた。
「佐藤圭太と安田実はどうしてる、どうなる?」
「二人とも事情聴取には素直に応じていますよ。実況見分が終われば身柄を検察に送って、我々の仕事は終わりです」
「刑罰はどうなるんだ?」
「それは我々には分からないです。ただ、起こした事件は重大ですから相応の刑罰が予想されます」
三鷹は淡々と事実と現実を述べた。
高木の顔がみるみる曇っていった。
「アイツらのせいで留置所にぶち込まれてエラい目に遭ったけどよ、どうにか刑を軽くしてあげられないものかな」
「嘆願書とか集めてみる?言っていい範囲で事件の真相動画を作ってさ」
島田が高木に配信者らしい提案をした。
「残念ですが——」
千早が目を伏せて首を横に振った。
「検察も裁判官も法に則って求刑し、判決を出します。そこには世間の同情が入る余地は無いのです。唯一汲まれるのは本人の改悛の情です。彼らは自らの行為を悔いるのでしょうか?」
「じゃぁ、今井加奈の両親の無念は誰が晴らすんだよ」
「鈴木にも西野にも遺族は居ます」
千早の言葉に場が静まり返った。
「彼らは——」
千早は高木を見て言葉を切った。
そして「高木さんたちのように、世間に訴えるべきでした。いつか必ず、CD-Rにも浄化槽にも辿り着いたでしょう」と続けた。
「木全は裁けるのか?」
高木は喉から絞り出すようにそう言った。
「以前少し話しましたが、失職はするでしょうね。殺人罪の時効は撤廃されましたが、傷害致死だと言い張られてしまえば二十年の時効が成立します。そこは無罪の公算が高いでしょうね」
千早の並べる冷徹なまでの事実は、高木の虚無感を煽った。
「やりきれねぇな」
高木はそう言うと、脱力したように椅子に座った。
「高木さん、それでも私は諦めていませんよ」
千早は力強くそう言うと「あなたもそうでしょう」と手を差し伸ばした。
「そうだな。絶望を味わうのは俺たちじゃない、木全の野郎だ」
高木はパンと千早の右手に自身の右手を当てると、強く握った。




