↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死者の告発  作者: 浅見カフカ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
36/56

凶報と決意

その凶報はラジオからだった。

釧路署へ向かうタクシーの中で三人は息を飲んだ。

「運転手さん、ボリュームあげて」

高木が前のシートにしがみついて言った。

島田は呆然と、テレビでも見るかのようにラジオを見つめていた。

千早のスマホからは、いつまでもコール音だけが鳴っていた。

『現在、市長を襲った男の身柄は確保。警察官ひとりが車に跳ねられ重体と、情報が入っています。木全市長の無事は確認されています』

「音尾さん、出ないのか?」

千早のスマホに視線を落として、高木が声を低くして言った。

千早が答える代わりに、アナウンサーの緊張した声が車内に流れた。

『新たな情報です。搬送されたのは音尾金吾《おとおきんご》巡査部長。現在意識不明の重体と——』

ドサっという鈍い音がして車体が揺れた。しがみついたシートから手を離した高木が、後部座席に沈む音だった。

誰も口を開かなかった。

運転手も何も言わず、降り際に「どうか、気を落とさないで」と目を伏せた。

去って行くタクシーの排気音をかき消すように、海保のヘリが上空を過ぎて行った。

「釧路の病院じゃないのか」

高木が西へ飛び去る機影を見上げた。

「帯広——いや、札幌の病院でしょうか。ドクターヘリと中継するのかもしれませんね。新得町に緊急の発着場があったと思うので、治療も並行するなら......」

「はは、沈着冷静な千早さんは本当に凄いね」

「ちょっと、高木くん!」島田がまだ潤んだ瞳のまま、強く鋭い視線と語気を向けた。

高木は島田に背を向けると「二人ともどうか、どうか頑張ってくれ。千早さん、悪かった」と肩を落とした。

「あっ」

普段の千早からは聞かれないような、間の抜けたような声が漏れた。

「音尾さんからLINEが来てました」

「助かったのか!」

二人の表情に光が灯ったように見えたのも束の間、千早の言葉に再び俯いてしまった。

「事件前の送信ですね。添付ファイルがあります」

千早は二人にスマホの画面を向けた。

「科捜研に送ったCD-Rの解析結果です」

「これは......連続写真?」

島田が首を傾げた。

「動画の切り抜きだな。容量のせいか」

「そうですね。動画はきっと入れられなかったのでしょうね。ファイルの圧縮なんて、当時の女子高生には難しかったでしょうし」

「私は今も無理よ」

島田は千早に首を振って見せた。

「音声データもありますね」

『ゆっちぃ、今更もう無理だろ。俺らが卒業するまではよろしく頼むね。バレなきゃいいんだって』

「これ、木全市長の声に似てるわ。少し若いけど」

「ゆっちぃって、湯島のことか。相当ナメてるな」

「連続写真は不鮮明ね。当時の画素数じゃ仕方ないわね」

「きっとその辺は、科捜研が何とかしてくれるだろ。なぁ、千早さん」

千早は眉根を寄せると困ったように「鮮明化は可能なんですが——」と口ごもった。そしてほんの一瞬、西の空に視線を遣った。

「鮮明化した画像は、正式な証拠にはならないのです」

「はは、沈着冷静な千早さん......アンタがそう言うならそうなんだろうな。それなら俺たちは、この不鮮明な画像に意味を持たせなきゃだな」

高木はそう言って右の拳を差し出した。

「はい」千早が高木の拳に、自身の拳を真っ直ぐ当てた。

「ここからね」

島田の拳が二人の拳に触れた。

強く吹いた潮風が、三人の拳に当たった。それは音尾の拳だと、誰となく感じていた。









評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。