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死者の告発  作者: 浅見カフカ


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音尾刑事

インターホンが鳴って間もなく、ドアを叩く音。

「高木さん、居ますかぁ。高木さぁん」

時刻は朝の九時だ。

「なんだよ日曜の朝っぱらから」

尻を掻きながらインターホンの受話器を取った。

「誰?朝っぱらから隣......はぁ、今開けますわ」

鍵を開けると同時にドアを引かれた。

外の明るさにしかめた顔の前に、警察手帳が突き出された。

男は笠木警察の音尾と名乗った。

柔和な笑顔で丁寧な口調だ。

その後ろでは若い刑事が硬い表情で頭を下げていた。

音尾は柔和な表情を崩さずに「先日の配信のお話を聞かせて貰えませんか」と切り出した。

「ちょっと待って下さいよ。俺、なんか違法なことやりました?」

心当たりだらけだったが、とりあえず虚勢を張ってみた。

「この動画は高木さんでお間違えないですか?」

音尾刑事はスマホを取り出すと動画の再生を始めた。

『うわぁ、暴力です!これは暴力です!』

「俺っすね。刑事さんも見るんすか、こういうの」

半笑いで見上げると「この人、殺されたんですよ」と音尾が動画を消した。

「高木さん、八月十三日の午後十一時頃はどこに居ましたか?」

「えっ、あ、いや」

「高木さん、三日前のことくらい覚えてるでしょ。嘘つこうとするから考えるんだよ」

音尾刑事の脇から若いのが急かしてきた。

それにカチンときて、つい前のめりになってしまった。

「いきなり家に来て急に三日前とか」

そこまで言ったところで肩が音尾刑事の胸に当たった。

当たったと言っても触れた程度だ。

音尾刑事はその拍子によろけると尻もちをついた。

いや、俺の目にはしゃがんだようにしか見えなかった。

でも次の瞬間「大丈夫ですか、音尾巡査部長」と若い刑事が叫んあと俺に何かごちゃごちゃ言って——

手首に冷たい金属の感触があった。

「九時七分、公務執行妨害!今日は長くなるぞ」

やられたと思った。

若い刑事がそう言う横で「高木さんがちゃんと話せば、大丈夫ですよ」と音尾刑事が柔和な顔を見せた。

近所の住民たちの好奇な視線が注がれる中、俺はパトカーの後部座席に押し込められた。

サイレンを鳴らさないのは、日曜の朝——

近隣住民への思いやりだろうか。

バックミラー越しに目が合った音尾の顔は無表情だった。




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